第十一話

ただただガラス器を配達するというだけの話。

普段はあまり気にならないが、シングルには付き添いが不可欠というシステムを変えない限り、社員が計二名という都合上、灯里が仕事をするときは、その労働効率が思いっきり下がってしまうアリアカンパニーの台所状況がいまさらながら心配になったりもする。普段だって、アリシアさんしか仕事してないわけだし。実はえらい高い運賃を取ってるのかもしれないけど

 まあでものんびりとした雰囲気は悪くない。人情トークはいらないような気もする。特に今回は感覚だけではどうにもないネタでもあるし。

 具体的には、ネオヴェネツィアヴェネツィアグラスを否定する人の主張は、それが単なる偏見の所産でなく、本当の目利きにはわかる相異がある可能性もあるっていうことですね。と同時に、灯里の「にせものなどない」理論はそれはそれで正しくもあるという言い方もできるわけで(実は対立する概念じゃないから。ようするに灯は真と偽の二分法でなく、旧と新の二分法を言っているのだ)。

 あ、そういえば今回は夏美も小雪も出なかったな。