第二十話「その影のない招くものは…」」

 直球怪談回。
 噂が生み出した怨霊とケットシーによる、町の不思議界最大のアイドル灯里さんの取り合い、という話でもある。まあ怪異譚としてはたいした話ではないが、序盤の明るい中での「あまり怖くない」おしゃべりが残響になって夜のパートを支えるあたりは、古典的だけど、それなりに見せられていると思う。女が灯里の手をとって走り出すあたりのイマジネーションの乏しさは、問題ですが。
 もっともその程度の問題は、その後の千両役者な登場ぶりを見せるケット・シー、そして彼(なのかな)?の文字通り偉大なお腹とこれまた文字通り偉大な肉球の素晴らしさによって、帳消しになってしまうようなものではあるけど。
 怪異譚としてはたいしたことはないというより、そもそも怪異譚はケットシーを出すための前フリ程度のものだったというほうがただしいのかもしれない。
 さてお話がこう妙に薄口だとこちらのほうで、勝手に解釈をしてみたくなったりするものである(単なる趣味の妄想とも言う)。
 この場合はそう、火星だしテラフォーミングだしで、やっぱりSF的解釈をしてみたくなるところ。となるとやっぱりでてくるのは、「火星年代記」である。
 そう、ケット・シーも怨霊も「火星人」なのだ。(ピンとこない人はブラッドベリを読んでください)
 その中の共存派は猫に取り付き、そうでないものは怨霊のようにして人を追い出そうと画策する、そういう勢力争いに灯は巻き込まれた、とこれは、そういう話なのではあるまいか?
 いつかこれをメインに長編話をやってくれないかな。