第七話「その ゆるやかな時の中に・・・」

 新旧社員が揃っただけで奇跡とかいくらなんでもそれは奇跡の安売りをしすぎでないかという、第七話。
 前半の「また休業?」という気もしないでもない旅行のくだりは、「それがアリア」と流してさえしまえば、あとは風光明媚を堪能できるできわめて快調なしあがり。元社員の先輩の家についてからのだらだらとしたおしゃべりと食事のシークエンスも、お茶の飲み方や子供の食事の仕方が下品で汚ならしすぎるのがひっかかることを除けば、悪くない(アリア社長はある程度は仕方ないにしても、子供まで同レベルの食べ方をさせなくてもいいと思うのだが)。先輩の語る地方のしがらみとか閉鎖性のくだりは、陰気で生々しい話になる一歩手前で踏みとどまったという感じ。基本的に現実的な重みとは無縁だった今までのシリーズとは異なる方向を目指して進んでいるのはわかるのだが、その方向でいくと作品の非現実性の象徴である、灯里の恥ずかしい台詞の数々が浮いてくるという、構造的欠陥も見えてくるわけで、難しいところではある。
 後半の核になっているアリアカンパニー創設秘話は、人間には理解できない行動を取っているアリア社長を見て、のちのグランマが一人合点をするというだけの散漫な仕上がり。アリア社長が現実の猫と違う生き物とはわかっていても、あの手の生き物が――それも野良――雨に濡れることを嫌がらないというのはあんまりないような気がするので、その点からしてもいまいちである。基本的な生態すら似せる気がないなら、猫という設定にしなければいいのに。
あと、台詞上は青い瞳ということになっているがどう見ても白い丸なのはおそらくこちらの目が悪いか、心がにごっているせいに違いない。
 最後の、「灯里のアリアカンパニー」というくだりはシリーズ完結を想定しての台詞っぽいけども、そんなことよりも灯里を見る、アリシア、グランマ、先輩がまるで過去の幽霊のように見える構図が気になってしまったりする(その年ごとの幽霊が一斉に出てくる童話かなにかがあったような……)。