第七話「ちゃんと言って、ここに書いて」

 タイトルと予告の台詞からするに、ノエ兄の策謀をノエが気づいて怒る話かと思っていたのだが、まさか、馬鹿主人公がノエに告白する話とは。
 前回の懸案、血縁問題は今回は曖昧なまま。ここでリュウ・アーチャーか金田一耕助でもいれば、事態の進展はもっと早くなっただろうが、その場合は失踪事件や猟奇殺人の存在が必須になるので、とりあえずは仕方ないとしたい。事情が知りたいが、空気の代わりにニトログリセリンが充填されているようであっても安定を保っているにはちがいない朝の食卓の場で何もいえない主人公、という場面はうまい。顔も性格も好きになれないキャラクターでも、ああいう心情を共感させることで、視聴者をさりげなく主人公の視座に誘導してくれているわけである。

 ノエさんは主人公や兄といった自分が気に入った人以外といるとき以外は、さぞや嫌われているだろうというオーラの充満する弁当がらみのエピソードからして、ちょっと早退したい気分。兄とおばあちゃんが甘やかしすぎたんではなかろうか。この物語を通じて、徐々に周りが見えてきているようだから、ある意味これはノエの成長譚でもあるわけだ。
対するヒロミは日ごろのストレスが爆発してというの感じはよく出ているけど、二人のバトル自体は、ギャルゲーお約束な争奪戦展開で、かなり恥ずかしい。この手の見た目優先の派手なイベントは避けて通ってほしいところだった
 中盤から終盤にかけて文字通りがぶりよりの今川焼屋さんはこれまた鬱積したものの噴出ではあるが、気の毒ながらどうせ真っ先に戦線離脱するのだし、これくらいの打ち上げ花火はあってもいいかなという気がする。振られ確定のミヨキチは神社で「手をつないで帰ろう」というところは割といいかなと思ったが、その後の「俺には〜」でふたたび株急落。手前は結局手前のことしか考えておらんのか。もっとももっといいやつでも振られるんだろうし、視聴者向けのサンドバッグキャラとしてはいいのかもしれない。
第三の男、ノエ兄は、ポジションは悪役だし、バイクで出て来たときは言動まで悪役だけど、わざわざ待ち伏せていたと思えば、けっこう可愛いやつである。動揺しているノエを慰める場面なんか、みようによってはハードボイルドの世界である。優しくなければ生きる資格がない。
 そして主人公の暴走により事態はさらにぐちゃぐちゃになるわけだが、さて。

 ちなみに冒頭の「似てる似てない」の話だけど、長女は父親に、長男は母親に似るというから、主人公は高橋理恵子ママ似でヒロミは(血縁説が本当ならば)藤原啓治パパ似ということに……。