第八話「進路!」

 一番衝撃的だったのは本編ではなく、次回予告直後に流れた氷室京介のコーラCMだったわけだがそれはともかく。

サブタイトルどおりに進路にまつわる話。と同時に前回のサブタイトルをそのまま使ってもとくに問題のない回でもあった。
コンセプト的にはサブタイトルどおりの、『あずまんが大王』の終盤とか『ARIA THE ORIGINATION』と同じ、登場人物が、現在の幸福を謳歌しつつ、未来へのまなざしを持つようになるという流れの端緒ではあるのだけど、経年進行で着実に時間が過ぎていたあずまんがや、遊んでばかりのようでもあくまで「修行期間の物語」(つまり未来に大成することが目的だ)であったアリアシリーズとは異なり、この『けいおん!』の人々は徹底的に現在に生きているから、やはりどうにもとってつけたような感じがするのは否めない。このシリーズは良くも悪くも「都合のいい現在」に特化してるからである。目標武道館とかは目標火星とかと大差ない話でしかない。
 まあその辺の違和感を作り手が重々承知しているのは、冒頭にも書いたとおり、前回以上にたっぷりとお茶会の描写に時間を取っていることからもわかるし、そうすることでたしかに、進路調査をめぐる唯の右往左往が突出しないようにはなっているのだが、そんな風にごまかしごまかしやるぐらいなら、むしろそういうやっかいな話はもっと後まで放置しておく(あるいは完璧に無視する)方針で、すっ飛ばしてしまった二年生の後半から第二期をはじめてのんびりのんびり時間を進めていけばよかったような気がするのである。あるいはひだまりスケッチ方式で、過去へ行ったり来たりするやり方をとってもいいけども。
 大体、そんな風にしてわざわざ腫れ物に触っても、結局なんのオチもつけられないのだから腰砕けもいいところで、くどいようだけど、不向きなジャンルなのだから、さっと触れてあとはもう知らんぷりぐらいの思い切りがほしかった。へたに引っ張ると「よくわからないけど楽しい」ではなく「よくわからないけど楽しくない」感じになってしまう気がする。
 もちろん、「軽音部の将来」を描くな、といってるわけではない。ただし、本気でそれを描こうとするなら、当然のごとく、軽音部の現在もまた書き込まないとならないのである。それは――これも当然のごとく――お茶ばかりしている軽音部ではなく「軽音」している軽音部の現在だ。これができてはじめて、軽音部の将来を思い描くことができるのではないか。そしてそれは失礼ながらこのスタッフの資質からは大きく外れた要求なのではないだろうか。そう思うわけである。現在地を見据えずして、将来の話をきめろといわれたって、それは唯でなくたって困るのである。
 次回は試験……。なんで今度のシリーズはこんなに積極的に地雷を踏んでいこうとするのだろうか。