第七話「お茶会!」

かつて「けいおん!」史上でここまで緊迫感あふれる展開はあっただろうか。
いや、ない。
では、かつて「けいおん!」史上でここまで視聴者の期待をはずした話はあっただろうか。
これは結構あった。
ではさらに、かつて「けいおん!」史上でここまで作り手が間違った方向に突っ走っているのが明らかな内容はあっただろうか。
これも結構あった。
ではさらについでに、かつて「けいおん!」史上でここまで細部が粗雑な回はあっただろうか・
これはいつものことである。

まとめていうと、どっちか、といわないでもあまり出来のよろしくない回だったということでございます。

緊迫感、とはまあ見た人なら誰もが容易に思い当たると思うが、サブタイトルの「お茶会」の部分のことである。先週、次回予告でこのサブタイトルをみたときは、水戸黄門のいちエピソードの説明として「悪党に印籠を見せるエピソード」というのとおなじ程度の的確さでそのエピソードの内容を示しているなあと思いはしたけれど、それでもまあ、一話だらだらと、紅茶飲んでお菓子食べて、をやるのはそれはそれで悪くないだろう(舞台固定ものは上手くやれば面白いからね)、いくばくかの期待もあったりもしたわけである。それがまさかこんな特別で恐ろしいお茶会の話であるとは、お釈迦様でもわかるめえ。
 これは単純に、ファンクラブイベントの内容がつまらないとかギャグが寒いとかギャグが寒いというギャグそのものが寒いとかそういう次元の話ではない。まあそれはいいのだ。だって、ファンクラブイベントなんていうのはそもそも、部外者にはついていけないイベントなのである。つまらない内容と寒いギャグのオンパレードなのだ。当事者にしたって、自分の高揚した気分と、会場全体のハイな雰囲気にのまれているからこそ楽しめているのだ。たぶん。
 すくなくても、客観的な視座から楽しめるようなしろものではないのは、火を見るより、いや、今回を見れば、もう申し分なく明らかな事実ではなかろうか。澪が言い間違いから変なギャグを飛ばすあたりで本気でテレビのスイッチを切りたくなったのはこのブログの管理人だけではないだろう。百物語攻めとか十七年の人生を半生呼ばわりとかも四コマの小ネタとしてはありだろうけど、このアニメらしい律儀な見せ方でやられるとかるいいじめにも見えてくるのも、ちょっといたたまれないものがある。
澪が特に好きでない視聴者にもきつい、澪好きの視聴者にはなおきつかった(はず)。そういう、世にもつらいお茶会!担っていたように思う。

で、ここで視聴者の期待と作り手(原作者かアニメスタッフかはどちらでもよい)の見当違いの話になるわけだが――
思うに、「萌え」とかキャラクターへの愛着って言うのは、本人と対象のあいだに夾雑物がすくなければすくないほど成立しやすいもので、現実においてもアイドルが結婚していたり恋人がいたりという情報の露出は、たいていの場合忌避されるのはそういう事情を考慮してのうえであろうし、作り手によるコントロールが容易な二次元のヒロインヒーローであるなら、彼らあるいは彼女らと視聴者のあいだをさえぎる要素はできるかぎり回避されるのも当然の流れといえ、現に本作だって変に視聴者のまえをさえぎる男キャラとかは少なくても見た目の上では存在しないも同じであるように、細心の注意を払って作られていたわけである。
 ファンクラブというものの存在はともかく、そのメンバーをたくさん出してしまったのは、そういう良くも悪くも強力なコントロールがきいていた空間の秩序を激しく乱しているようにおもう。ファンクラブ会員がぞろぞろでてきて「澪かわいいー」を連呼させることは、見た目はともかくやってることは、デブでメガネでリュックを背負ったオタクの典型的なキャラを大挙出現させて「萌えー」と連呼させているのと大差なく、それは前述したような「熱狂の客観視」という冷淡さにとどまらない、「第三者には付いていけないものでもありがたがる愚民」とでも言うような、ファンそのものの侮蔑につながっているようにもみえるのである。
 もちろん、作り手にそんな悪意があったとは思えないので、例によって例のごとく、もう一歩考えてみることをしない作り方の産物なのだろう。悪意をこめることになんのメリットもないし、そういう作家性の人たちでもないからである。焼きそばパンのシールの話をみても、一体どういうアクロバットをするとあの位置にシールが(偶然、そして無自覚なまま)つくのか、そして朝からファンクラブ以外の誰かになにも言われなかったのか(よく気がつくのどかが同じクラスだというのに)とか、そういう整合性をなにも考えてなさそうなのも、傍証としては有力だ。

 これは「成功のうえに胡坐をかいている」というような単純な問題ではなくむしろ胡坐を欠くまいと意欲的に背伸びした結果、できもしない世界に手をだしてしまったということなのではないかと思う。
おそろしいのは、次回の話題「進路」もまた、同じ流れにあるように見えるところで、今回の内容も含め、ツマラナイコトハヨセ、といってくれる親切な人が近くにいなかったということなのか。ドウイフあにめニ、コノあにめハナリタイノカ。


ときに、軽音部が生徒会長の顔を知らなくても不思議ではないっていうのは、やつらひょっとして生徒会に全然出てなかったりするのだろうか?

もうひとつ、会員証の会員番号って会長は0001番固定とかなのかしら。カードそのものはひきつぎでなくて、わざわざ作っているっぽいのだが……。