第五話「お留守番!」

裏タイトルは「プレゼン!!」である。
いうまでもなく、次期軽音部トリオの、である。梓も憂も基本ができすぎくんなキャラなので、純ひとりにボケと暴走が一任されていて、気の毒といえないこともないが、本当に気の毒なのはものすごく適当に描かれたジャズ研の新入生たちだろう。
 まあそれはともかくとして、軽音部三年生組が不在時の話。修学旅行チームの異常なハイテンションにくらべるとこちらは異常にまったりと落ち着いている。おまえらは二十代後半のOLか! と、単なるイメージで批判してみる。
 まあそれもともかくとして、こういう小ネタの羅列というかささやかな出来事の連続で描いていく構成だと、一つ一つの出来事の面白さよりもそのことに対するキャラクターのちょっとした反応やら、出てくる小道具の描写なんかの工夫が大切になってくるのはいうまでもないけど、このシリーズの場合、前者はけっこう巧みながら後者はかなり残念な感じであるので、スタッフの力量が問われる内容とも言える。

 で、どうだったかというと、だいたい予想通りの感じである。いつも以上にキャラの挙動の描写がしつこい気もするがこういう話ではむしろぴったりで、三人のキャラが上手く描き分けられていたと思うし(でも、最後の「けいおんぶ」といわせてしまうのは余計)、そして細部描写はいまいち(限定三個のパンとか何がしたいのだパン屋、とか、九時半に寝てしまう高校生、とか、現役ジャズ研部員のベーシスト、ジャズ一家に育った軽音部ギタリスト、軽音部ギタリストの姉を持つ妹、がいるのに、やることの選択肢に「音楽を聴く」がない不思議、とか、梓のほどくととても元のかたちにまとまりそうにない分量の髪の毛とか)。
ただし今回は二つが一緒になっているところもあるから、一方に引っ張られてもう一方まで残念になっていたり、その逆もあったりもする。引っ張られて残念になるパターンでいうと、冒頭の憂が携帯を見る場面なんかがそうで、あの妹の性格的に食パンを齧りながら機械いじり、というのはやらない気がする。彼女の料理がどこの料亭だ!といいたくなるレベルの細心さでなおかつ今回より人数が多かったクリスマスのときより量が多すぎるというのは、おそらくギャグのつもりなのだろう。逆に、細部の残念さがキャラでごまかせているのは、三人でセッションをする場面なんかがそうで、ジャズ研の設定がよくわからない(「本物じゃない」とは梓さんのお言葉)とか、そもそも亀に餌をやりに来ただけなのに、勝手に演奏とかはじめていいのか、などといいたくなる気持ちもあるのだが、メインの軽音部のときよりもよほど素直に「みんなで音楽をやる楽しさ」を絵的に見せられているように思う。しかし考えてみると、純を軽音部に引き抜いて、憂を新加入させ、ドラムレスのトリオ編成(四十年代のナット・キング・コールアート・テイタムみたいな?)で新バンド結成という展開も無しではないが、三年卒業後も梓が高校で音楽をやっていきたいならジャズ研に参加すればいいだけなのでは、という気もしないでもない。亀の世話のためだけに軽音部に居続けないとならないとしたら気の毒すぎる。

ところで、ジャズ研の壁に貼ってあった、LPジャケットサイズのカインドオブブルーはほんもののLPジャケットなのか、LPジャケットのレプリカなのか、はたまたLPジャケットサイズのポスターなのか。謎は深まる。部室にアナログレコードのプレイヤーがおいてなかったように見えるから、仮にほんものであっても単なる飾りなのだろうけど、梓の第一印象とは異なり、割とふつうのジャズファンのいる部活のように見えるのは気のせいだろうか(梓的に「ほんもののジャズ」はハードバップまででモード奏法を全面的に使い出して以降は「ほんものじゃない」ということだったりして)。