第四話「修学旅行!」

最近、サブタイトルの「!」がタイトルの『!!』と揃ってないのが気になりだしてきた。

というのはともかく、学校の定番の行事であり、学校もののフィクションでは定番のネタである、修学旅行のエピソード。

京都に修学旅行……って、あれ?『けいおん!』って背景美術を、京都の実在の風景を参考にしてると聞いた(読んだ)気がするのだが、京都がモチーフでも東京が舞台だったということなのだろうか。けいおんのために京都へ「聖地巡礼」しに言った人がいたらその人の立場がどうなるのか少し気になるところ。

まあそれはいいや。
修学旅行の描写自体は、唯に顕著の、修学旅行らしいハイになった感じ、とか、友達と同じ部屋で寝泊りする不思議な気分、とか、皆で見る遺跡や史跡や名所から受けるえもいわれぬ感動と興奮、そういったものは非常に、よく出ていたと思う。

ただ、こういう感慨って、一番最初に言ったときのものだよねえ。小学生か、中学生か、そういう時分の話。

関東近郊の高校生で、修学旅行で京都奈良に二度行ってしまう悲劇に直面する人は少なくないのだ(だから、高校によっては気を遣ってスキー教室にしたり沖縄に行ったりする)。スタッフは誰も疑問に思わなかったのだろうか? 初めてでもない修学旅行でこんなにハイになるのは変だ、と。

いやいや、軽音メンバーで行くのが楽しいのだ、ということなのかもしれない。確かに、気心の知れた面子で行くのは楽しいだろう。でも唯にしろ律にしろ社交性が低いようにも見えないし、それまで特別孤独だったようにも見えないから、いままでの修学旅行も同じように楽しかったのではないだろうか? 四人とも小、中とろくな友達もおらず、学校行事にも暗い思い出しかなくて、今回が気分的には実質はじめての修学旅行みたいなものだった……という裏設定でもあるのなら、理屈はあうが、そんな薄暗い過去はこの作品には余計な気がする。

こうなった理由はわからないでもないのだ。キャラクターにとっては初めてでなくても視聴者にしてみれば始めてみる軽音メンバーの修学旅行風景なのだから、修学旅行で想起される定番イベントは皆やっておきたい、という配慮(いらぬお世話とも言う)である。二回目の京都となったら、最初にまず見てるだろう金閣寺なんかはルートから外すのが基本だろうけど、それではあまりに修学旅行っぽくないかもしれない。だったら、中学のときはみんな京都以外の場所だった、みたいなエピソードを先回りして入れておけばいいのであって、そういう段取りを完全に省いたら、疑問ばかり増えてしまってよいことは何もないのだ。迷子になるあたりの迷子感なんかはなかなかよく出ていると思うのだけど、あれで迷子になるならおそらく中学時代も同じことがあったはずで、そういう回想も混ぜることで作品世界がいい按配に立体的になっていく気もするのだが、中学時代の話はビッグバン以前の出来事ですといわんばかりに誰も触れようとしない。二クールでゆったり描写をする余裕があるはずなのに、どうにもペース配分がよくわからないことである。時間が足りなくて仕方なくいろいろ削ったというのも、さわ子先生がらみの天丼ギャグとか入れている余裕はある以上、どうにも筋が通らない。

こういう作品の根底に関わる問題にくらべれば、現地に行ってからスケジュール立ててるように見えたり、明らかに現地で移動手段決めてたり、という京都アニメーションらしい、微妙にありえない描写や、詰めの甘い細部設定はたいしたことないといえましょう。

にしてものどかの口調が回を重ねるごとにどう聞いても高校生に聞こえなくなってくる……おばさんにもああいうしゃべり方をする人はいないというか、いやそもそも「〜〜してみるわ」とか「〜〜かしら」とか「〜〜よね」とかつかう人間がまだ現存しているのであろうか。フィクションらしい誇張にも限度がある気がする。唯たちがわりと普通なだけに変さが際立ってるし(のどかって変人キャラじゃないよね?)。

 次回は居残り組の話。亀は無事か?