第四話まで

 放映が始まるまでずっと「WARNING!!」だと思っていた。

警告:本作には非実在青少年に対する性的視線があります! 

みたいな。ちょうど、東京都青少年の健全な育成に関する条例なる、見るからに不健全そうな条例をさらに不健全にしようという改正案が通るかもしれないという瀬戸際の時期だったころに、CMを見たものだから、そんな連想をしてしまったのだろうが、思い込みとは恐ろしいものである。
まあそういうくだらない条例案を出している東京都向けに発信されている東京メトロポリタンテレビで、しかも深夜でもない時間帯で堂々放映されているんですがね、これ。

 もっとも、本作は見たところはそんなに性的ではない。パンツや裸の描写は無いから、すくなくても火曜日の同局同時間帯でやっているやつよりは全然おとなしめだ。かわいい女子のひしめくファミリーレストランでバイトすることになった男を中心としたラブコメ、というエロゲーの「ぴあキャロットにようこそ」みたいな話(*1)ではあるけれど、ノリとしては、日本刀常備のサイコパスとかツンデレを通り越してヒストリーオブバイオレンスな人とか個人情報の収集にいそしむ脅迫魔とかまともな会話ができない過食症の店長とか、そういう頭のねじが何本か抜けているような人々の集団に入り込んだ小物フェチの悲喜劇という、あらすじを書くと萌えアニメカリガリ博士みたいにみえないこともない、のほほんコメディがメインだからである。
 だからといって性的でないかというと、それも違っていて、特に第一話なんかは主人公の視点を代行しているのか、阿澄佳奈ヒロインの一挙一動をなめるように描いており、それは石原慎太郎の『聖餐』が非実在青少年に不健全な扱いしているだけでなく、あくびが出るほどつまらない小説であるぐらいに明白な事実である(*2)。

 ただし、阿澄ヒロインに対する性的な視点は第一話がピークで、女性向けっぽい野郎キャラの描写が増加し、さらに伊波さんがメインヒロインとなる第二話以降は、お色気要素は回を重ねるごとに減っているのも事実ではある。四話目にしてまだ各キャラクターの掘り下げと関係性の説明をやっているので、フェチな描写をたっぷりやる余裕がないだけなのかもしれないけど。
 このアニメの、作品的な問題点はたぶんそこである。フェチな女子描写の減少、ということではなくて、四話費やして、まだ土台作りをやっているというのは、大河ドラマの構成をしてるわけでもあるまい、と思う。こういってはなんだが、この手の話の肝であるはずのコント的なやり取りが原作段階からいまひとつなせいで、いざアニメにしてもそのへんで話を広げられず、なおかつ、スタッフにそのあたりでネタを増量できるセンスのある人がいないのではなかろうか? 監督の平池芳正も(フェチな)コンテへのこだわりはかなりありそうだけど、ライターとして腕利きというわけではなさそうだし。気負ったつくりではないので、のんびりみるには支障はないし、前期のはなまる幼稚園にも通じるやわらかい絵柄はそれだけで和むものがあるので、脚本が未熟でも問題ないといっていえないことはない。いい意味で環境映像的な作品といえるかもしれない。

 なお、サエキけんぞう神前暁というよくわからない組み合わせによるOPとEDは良い感じ。EDの野郎チームの歌は、このオケのままサエキボーカルにすればパール兄弟かエレキ・マッシヴの新曲として使えそうでもある(*3)。
 




(*1)といっても、かなん(現・大月悠祐子)の漫画版しかしらないが。
(*2)でも、この「聖餐」という短編は、石原都知事の「批判されて都合悪くなると他人のせいにして逃げる」という現在の行動パターンの根底にある人間性が鮮やかに出ている側面もあって、読んで損は無い。
(*3)これは、このアニメとはたいして関係は無い話だが、年末に新宿ロフトのサエキ主催のライブイベントにいったらサエキけんぞうがいた(ある意味あたりまえ)。やや肉付きが良くなっていたが、あの髪型とあのメガネでいかにもサエキけんぞうでございという感じでありました。パール兄弟のライブの予定は無いのだろうか?