四話まで

この作品ぐらい、本編を見るまでの巡り会わせが悪い作品もなかなか無いだろう。
第一印象は、語呂の悪いタイトルだな、ということであったのだけど、これは、書店で単行本の第一巻を見たときの話で、「カイチョウハメイドサマ? なにか寸詰まりな印象。「生徒会長はメイド様!」のほうがまだましか? いや、そもそも「メイド様!」という後半が問題なのでは、などと思いつつ、買ってかえったわけなのだが、しかしそのまま読まずに幾年月、いよいよどうやらアニメが始まるらしいってんで、先に読んでおくかと書棚をあたってみたら、すでに本の森のいずこかに消えてしまっていた。ロストインホンダナ。やはり本は買ったときにすぐ読まねばならない。
 かくして放映が始まり、機械が録画をはじめても、どうにもなかなか見る気にならない。だってそもそもメイドさんにはそんなに興味が無いのだ(個人的にメイドキャラで「可」なのは宵闇通りのブンとまほろさんだけである。シルファさんは、あれはメイドさんれはないのれす)。
 しかし、桜井弘明が監督と知って俄然視聴意欲もわいてくる。前作『GA』がどうにもこうにもなんとも言いがたい出来だったが、今回は構成脚本が池田眞美子、とくれば、これはもう見る前から質の高さと安定感は保障されているといってもいい。
 ので、四話も貯めてから見たのである。見て確かめるまでもなく、質の高さと安定感が保障されているのなら、慌てて見る必要もないのである。見る前から安心できるのなら、見なくても安心できるではないか? 
で、これは非常に正しい選択だったと見てわかったのでありました。
安定した面白さが連続する心地よさは、話数が多ければ多いほどその力を増すのですね。極端なはなし、全話完結してから見るのが最も心地よいのではあるまいか。GAの居心地の悪さは一体なんだったのだろう、桜井監督。

 さて、話も設定もまあ、非常にいい意味で、他愛ない。環境等に問題はあっても基本的に無敵な生徒会長さん――キャンベル家のあんまり賢くない跡継ぎと、口調も声も良く似ているのはおそらく気のせい。キャラクター的にはこっちのほうが良くできている――と、彼女と同じかそれ以上に無敵なハンサムくん――どこぞのかっこつけ刀鍛冶とは声以外はほとんど似てない――との、時と場合によって立場が都合よく入れ替わるソフトSM的な要素もあるが、本質的にほのぼのとした愛情関係を中心に、さりげなくヒロインがハーレム要因を増やしていくという奴である。男のほうがそのたらしっぽい外見とは裏腹に純情一直線なのが花とゆめコミックスの作品らしい(フラワーだったらおそらく男は本当にたらしになっているはず)。
 設定のみならず、内容的な工夫もほぼ無きにしも非ずだけど、王道的な要素をはずさずやっているものを、桜井&池田チームがあまさず汲み取ってフィルム化した結果、見事に王道の面白さを獲得している。学園祭のエピソードで、喫茶店のフォローに入った会長さんがつい仕事での口調が出てしまい教室中が凍るシーンの完璧な流れと演出を見よ。あるいは、四話目の葵のエピソードの、会長の着替えを見て顔を赤らめる葵の見せ方で、真相を実質オープンにしてからの、ラストの種明かしのくだりのあっさりした味付け。職人芸とはこういうことをいうのれす。目新しさなんかを評価基準にしなければ、今シーズン屈指の出来だろう。
 さて、この調子で続いていってくれるのはほぼ確実なので、そこに不安は無いのだが、不安なのはこれがなんクールあるのか、ということである。一クールだったらさびしすぎる。二クールだと終わったときの喪失感が大きい。うーむ。

 さて、第一巻を探すかな……。