第六話「狼と痴話喧嘩」

 重々しい音楽とともに現れるのが上記のサブタイトルであり、それがとりもなおさず今回の話の内容を象徴しておりました。つまり、結構お気楽な話なのであったのです。
 だってもう貨幣詐欺の話はどうでもよいのですもの。
 そう、話の核はすでにホロ奪還になりかわっていたのである。ちょっと、いや、かなりびっくりであった。

 まさか、仕掛けがうまくいくのはミロード商会の財力と行動力があれば、ホロ救出の段取りもミロード商会の財力と行動力があれば、と、のちのスピードワゴン財団を思わせる超組織であったとは。ちょっと、いや、かなりびっくりであった。

 行商人や商人があっさりホロのことを信じてるのも、ちょっと、いや、かなりびっくりであった。一神教とでないにしても、商人ならまずは騙りの可能性を考えるべきであるように思える。ロレンス(くんをつけると、なにか別のキャラのように見えるので、つけない)にそんなに信じられるものがあったのだろうか?
しかもロレンスはほとんどなんもしてないし。

 教会がある意味国家並みに権勢を誇っているというのは、いかにも中世っぽいが、時代設定はおろか、作中の宗教観もよくわからなくなってくるのはこまりもの。ホロのような民間信仰の神々、いってみれば「生み出された神々」がまだ少なからず生きていた世界で、キリスト教的な一神教――こちらはいわば「作られた神」だ――が、そんなに覇権を握れるだろうか? まだまだ発展途上の組織という設定じゃまずかったのだろうか。ちょっと、いや、かなりふしぎである。
 それどころか、これはテーマにも関わることだから、不思議ではすまない気がする。
 クロエのエピソードが示すところからすると、物語の結末――といっても、原作が未完である現在、アニメでそこまでやるとは思えないが――は消え行く古き神々への挽歌であり、ホロの目指す「北」とは、たんなる故郷というよりは、アーサー王伝説でのアヴァロンとか指輪物語における「西方」と同じ、役割を終えた伝説が去るところで、そのホロがついにこの世界を去るにあたっての花道、あるいは最後通告としてあるのが、教会による一神教支配の完成であるはずだからだ。今現在、教会がすでに強くては意味がないんじゃなかろうか。

 ともあれ、ロードムービーとか宣伝しつつもあまり旅をしてない二人組みがようやく身軽に旅に出たところで次回なわけだが クロエの話もまだありそうだし、結局あまり「ロード」の話にならない予感。