第十六話「つきせぬ想い」

 前回どんなことがあったのか、ということの絵解きにならない絵解きと更なるネタふり。バルマスケの皆さんはいくら出てきても、計画通りとか問題ないとか言うばかりでなにがしたいのかさっぱりわからないままだから、わざわざ画面に顔を出す必要がほとんどないのだが、とりあえずヘカテーの出番が必要ということか。鳥の場面が示唆するように近衛フミナの残像もあるようだし(そういえばあの鳥はあの高いところでよく生きてるな)。とはいえ、ヘカテーが出ると、くたびれたサラリーマンとか安い狂気をばら撒くマッドサイエンティストとかは、出れば出るだけ、画面のグレードが下がる連中も出てくるので、トータルでは作品のプラスにならない気もしますが。
 一方地上は、ぼんくら軍団がわからないというばかり。あんたらがよくわかってないことはよくわかってます、という気持ちを視聴者にあまねくいだかせるというイベントですな。アウトローってなんだっけ? 説明があったかもしれないがよく覚えてない。情報屋がわざわざ送ってきたデータということはそこにはすべて意味があるとおもうのが普通で、玉石混交と考えるのは危険なのではなかろうか?
 設定関係とはべつに進行するラブストーリーパート、具体的には吉田さんがらみにはどんより不快感がある。フィレスの言ってることをまとめると、自分の大切なヨーハンになにかあったら困るので、おまえが死んで連絡せい、ということで、それがなんで吉田さんが「彼らと同じ位置に立つ」ことになるのか皆目不明な上、グゼノオウが普通の人間への配慮がまるでない存在であることはよく伝わってくるけど、奴らのなかでは、そこそこ話のわかる人っていう位置づけだった気がするフィレスのキャラも、ただの自己チュー野郎になってしまった(あ、これは「駄目だよと彼にいわれたから今日は無理矢理宝具をとらない記念日」と言った前回の時点でそうか)。もっとも、一応人間の側にいるマージョリーにしても「狂気に酔ってなんかいられない」という発言でもわかるとおり、ある程度は自覚的に暴走して、破壊と殺戮を繰り広げていたわけだから、ろくでもないのはあまり変わらない、というかむしろ、フミナのようなキャラを操って自分達の目的に着実に近づいていくバルマスケの皆さんのほうが人心の機微について鋭く細やかな感性を持っている、とすらいえる。詐欺とは配慮の天才にしかできないことである。

 ようやく自分でも戦おうと思い出す主人公をみてガンダールブですかとおもったのは、たぶんとても自然な心の動きです。