第十話「オービター」

 冒頭のインチキ吹き替え映画テイストは悪くない。

 所長は見ていると不快になるのでできる限り出ないで欲しいところだけど、今回は、人様のトラブルを称してあっさり「大きなチャンス」と言える、「大人」なところを見せ付けるシーンが素晴らしく黒かったのでよしとする。これ、普通の話だと、ある程度罪悪感をしめすとかその欠如を突っ込むキャラが出てきてバランスをとるところな訳だが、そういう常識的なフォローを一切排して、ひたすら視聴者の胸糞を悪くすることに全精力を傾注するスタッフの意気込みは、ある意味見上げたものである。
どこのピカレスクロマンなのか、ともおもわないでもないけど、ようするにナニワ金融道みたいなものを作っているつもりであるのかもしれない。まあ、あれほど社会的な問題意識があるようにもみえないので、その目指すものがいまいち見えないのが難点ではある(これは、いやみではなく本気でわからない。「これが大人の社会なんだよねー」みたいなことをいって、悟った気になりたいお子様向けのサービスイベントなんだろうか? ずいぶんと狭く小さなターゲットだが……)

 ちなみに、所長たちが人間としては屑のレベルにあるというのはスタッフもちゃんとわかっているのである。娘の初飛行におまいりに行く親がいたりするので。東京大空襲を経験したというおっさんにしても、彼がロリコンかどうかとかそういう話はともかく、その「確信」は失敗して欲しくないという気持ちの現れであるのだから。ビジネスチャンスーとか言ってなんら恥じることのない誰かさんとは違うのである。