第二十三話「不信」

完全に連続ものの体をなしてきたタクマ編。前回、今回、そして次回のサブタイトルがディックフランシスよろしく二次熟語統一なのは、シリーズものであるという表明なのだろう。

今回は、刑事が地獄通信の真実に肉薄していく展開だが、たった一人でふらふら調べもの、捜査会議もなんにもない、という時点で、警察をまともに描く気がないどころか、刑事もののセオリーすらどうでもいいのが見え見えでちょっとどうしようかと思ったが、メインはその刑事の妹と、タクマに責任を擦り付けるおっさんなので、このシリーズの重大な欠点である設定交渉の甘さは、割りと気にならない(でももう少しちゃんと調べてやるか、型にのっとってくれとは思う。お話の展開や地獄関係の設定は理屈に合わなくてもいいが、普通の世界の設定までそうでは困るのだ。

話としては、メインの二人、妹とおっさんのキャラは悪くない。とくに、悪辣なおっさんが無駄にリーダーシップがある(ようするに典型的ないじめっ子タイプである)のはいい。声の大きい人になんとなく流されてしまう近隣住民の描写もそれっぽいし。
刑事の妹は、珍しいぐらいまともな感覚と思考力を持ったキャラで、しかも生きた人間ではもしかしたら初めての閻魔ハウスへの来訪者という、今後の展開が読めないキャラで面白いのだけど、ただひとつ、兄の名が純でないのが納得いきません。

それにしても、衆人環境ですぱすぱ人を消すのはどうなんだろうか、マスヒステリー的な状況を現出させるために、そうしたいのはわかるけど、こういうのは普通、停電が起きるとか、ちょっと席をはずしていたらいないとか、そういう「神隠し」パターンで消えるのが基本だろう。今までは、大体そうだったのだし(タクマとか依頼者の前で消えるのは、地獄少女を知っているものの前では、あえて隠すことはない、ということで説明がついた)。

かくして、地獄通信の存続自体が怪しくなってきたが(都市伝説が、周知の事実になってしまったら、それこそただの殺人代行業になってしまう)、果たしてどうまとめるんだろうか。