第九話「テナルディエの悪だくみ」

 重い。重すぎる。
 融通のきかないジャヴェール。悪辣なテナルディエ。漫画の元は戯画であるというのを強く認識させられるような強力なキャラクター性が光り輝く。そのぶんマドレーヌ氏はいまいち弱い(これは彼の思想的バックボーンであるミリエル司教の出番がないせいかもしれない)。

しかしストレスがたまります。これ、本来の想定視聴者である小学生ぐらいに見せるには重過ぎるのではないだろうか(悲劇の要因が、ベタな悪意とか敵意でないあたりが特にアダルトである)
 今回はオリジナル展開がとても優秀で、とくに、メイエさんの贖罪と、そこで描かれた彼女の「悪人ではないが、機転が聞かない」という性格を続く展開に上手く活かしたところは感心した。人は悪意がなくても、結果的に悪行の片棒を担いでしまうことがあるのである。
テナルディエの偽装工作も面白い。しかも、やっていることは最悪なのに、皮肉にも先にネタふりされたスカートのエピソードと絡んで、ファンティーヌのためになる嘘だったりするのも奥が深い。悪を欲しつつ結果的に善をなす存在、とはちょっと違うけど、キャラクターの彫りの深さではそれに近いものがある。
あとあのあたり、ある人物の今後(原作どおりなら)へのさりげない伏線だったりもするのも凄い。

 次回。更にヘヴィーな展開となるわけだが、予告で視聴者へのネタバレに近い前ふりをしているのは、やっぱりいろいろ説明不足になってしまうということなんだろうか。