第二十話「不忍池子守唄」

 土方歳三編後編。といっても歳三くんは脇でちょろちょろしているだけで、メインはもちろん往壓の旦那である。

 いや、もしかすると真の主役は往壓の御母堂であるかもしれない。それほど出番があるわけでもないのに凄い存在感である。刀の妖夷なんて、たんなる敵であるにすぎず、やっつければいいだけの賑やかしに過ぎない。

そういえばユキさんの周辺にいるキャラは性別にかかわらず「お母さん」キャラが多いな。小笠原の旦那にせよ雲七にせよアビにせよ。アトルさえOPをみるとそういう感じである。

 他方、「お父さん」キャラ――すなわち体制と権威と理念を体現する存在――というといまだシリーズ最強の存在感を誇る鳥居の大将である(往壓の幼少時のことを知っていたという伏線あったっけ?)。彼との対立は今後焦点になってくるはずだが、ユキさんに化け物は退治できても若本規夫は倒せそうにない。すくなくても往壓が「子供」であろうとするあいだは無理だろう。天河アキトがゲキガンガーの最終回を見て「大人の階段のぼ」ったように、彼が「異界」を諦められたとき、はじめて鳥居と対峙できるはずである。

 お話としては妖夷との戦いがメインであるため仕方ないことだが、二人目の往壓殿の話が少ないのがもったいない。ユキさんとはドッペルゲンガーというよりは鏡像的なキャラなので、ぶつければ面白かっただろうになあ。
 まあ南米の巨大カブトムシみたいな妖夷とドラゴン往壓の怪獣映画的な戦いはそれはそれで壮観で、わるくないのだけど。

 そういえば歳三くんが未来を幻視して「武士の死に方も悪くない」というくだりはちょっと老成し過ぎではと思わないでもないが、実在の人物を使った価値のある、いい場面だった。

 エピローグのアトルと宰蔵の絡み(宰蔵がなまはげみたいになるのが楽しい)はもちろんお遊びシーンではあるが、二人が仲の良さを示すシーンでもあるので、このままいいコンビになってくれればなと思う。往壓を巡っての争奪戦になりそうでもあるけども(前回の描写からするにほかのあやしのメンバーにも明らかな、慕いっぷりであるようだし)。

 さて、次回はどうやらエドゲンがメインになるのかな。