第十九話「あのひとの記録」

 気難しい母親の介護に疲れた娘が地獄通信に依頼する、というまるで老人介護問題の話かと思いきや、より人間の根本的な問題を取り扱ったお話で、もしかしたらシリーズの惹句となった「憂鬱アニメ」のコンセプトがもっとも正しく発揮されているといって過言ではない、もっとも救いのない、大変重苦しい後味の残る話でございました。

エピソード的には、母を殺そうとした娘の変わりに父親が呪いを行使するというのは、母を殺そうとした娘の代わりにかつて娘のために呪いを行使した母が死ぬ前回と微妙に被ってしまっていて、シリーズ構成面での問題も感じられないでもないのだけど、そんな問題がどうでもよくなるぐらい今回の犠牲者のキャラクターは強烈だ。これは、決して救われない魂、決して和解できない、わかりあえない人間もいる、という世にも恐ろしい話なのである。最後の「生きていること自体が地獄」という考察が強烈だ。
作中で重要な役割を果たすおはじきは、それがターゲットの手に握られていることはすぐわかることで、それが意外性を狙っているとしたら失敗だけど、テーマ的には彼女がおはじきを持っていることのインパクトよりも、彼女がなぜ持っていたのか(がはっきりとわからない)ということのほうが重要なので、あるいは見せけちにして、視聴者の深読みを誘っていたのかもしれない。

 そんなこんなで見る側の気分を奈落の底に落としておいて、次回はというと、「湯げむり温泉、旅の宿」。
 飴と鞭にもほどがありやしませんか。まあ、予告映像から察するにサービスカット乱舞のわりに重苦しそうな雰囲気も充分あるので、もしかするとそれほど落差はないのかもしれないが。