第十六話「この国のために」

愛国右翼の話かと思ったら、現実逃避と自己欺瞞のために政治に夢中になる人の話でした。
態度ばかり大きくて、実務能力のないおっさんの描写が生々しくてすごい。いくらなんでも娘をレイプさせて「これでおとなしくなるだろう」ということはないだろうから、あれは襲った二人の独断専行で、おっさんは引ったくりとか暴行を想定していたということにしておきたいところ。それでも最低の親であることには変わりありませんが。
シリーズとしては、ここのところの傾向である地獄チームの積極的な状況への介入が印象的。初期のこのシリーズなら、レイプ阻止には走らなかったんじゃないかなあ。はっきりは描かれてないけど、お母さんが紐を引くのにあたって最後のひと押しとなったのは一目連の注進なんだろうし。小泉首相を殺せなかったのは、それは「義憤」であっても「怨恨」でないということなんだろうか? あれ、それにしては一応接続は出来たんだよな? エラー画面を見せたかっただけなのかもしれない。
テーマ的に微妙なのは、名塚香織のヒロインはメンタリティ的にはけっこう父親と近いのに、最後までそれを改まらないところ。「生活が苦しいのは政治のせいだ」から「生活が苦しいのはお父さんのせいだ」になっただけだから。しかも今回はお母さんが泥を被る形になっているので、彼女自身はまったく被害をこうむってないし。

まあ、またもダンディ&ハードボイルドな輪入道(この人がらみだと世相ものになりがちのようだ)が見られたからよしとしますかね。