第十四話「絢子さんの恋人」

 タイトルはようするにそのままの意味なのだが、個人的には屈指のトラウマ漫画『南くんの恋人』を連想して怖かったのですが、もちろん死者が出ることもなく、暫定的とはいえハッピーエンドを迎えたのでした。
 しかし二人で協力して卵を育てるとか、心は逆らっても……は求めているとか、護の力を「注ぎ込む」とか、あからさまにセックスのアナロジーで作ってますが、そんなことよりビアトリスってものへのちゃんとした説明がないままにきておいて、ビアトリスには意志がとか言われても面食らうだけなのです。しかも、失敗したということなのに鳳凰みたいのが生まれてるし。よくわからん。何を生ませるつもりだったのでしょうか。
 その卵核(この字でいいのか?)暴走の展開のときに妹を呼びつける子安兄は普通にお兄さんっぽい感じで、そこまでのいささか安っぽい「魔王」ぶりよりだいぶ好感が持てました。あんな判りやすい厭な奴でなくて、学究熱心で周りが見えない人ぐらいにしておけば、絢子の悩みももっとこう自然で納得のいくものになったような気がする。真に拒みにくいのは善意の誘いなのだから。