第十三話、第十四話

ヴィクター出現までを一気に。
二話連続放映の二話目にながーい「前回のお話」が入ってしまったのは、番組編成のミス? (十四話は年明けのブランクを見越して作ってあったとかなのだろうか)。
 というよく分からない構成面での問題を除けば、十三話が全体で十四話へのステップエピソードなので、見る側の気分が途切れない連続放映で見られたのは幸せなことだったといえる。先週のことを「思い出しながら」見るのと、「憶えている」状態で見るのでは、話への没入の度合いが違うからね。
 展開もテーマも原作に忠実で、すなわち、少年漫画的なもののシミュレートとでもいったらいいような、定番の大盤振る舞いなのだが、確実な技術によって躊躇なくうたいあげられた定番は、それが定番である理由を明らかにする。すなわち、それがいちばん強く、かつ、たくさんの人に届くのである。バートンフィンクよりタイタニックで感動する人が多いのはそういうことだ。田中公平の音楽は今回もまた強力にバックアップ。特に友人たちの強がりを「信じる」カズキのシーンは素敵だ。

 そしてついに登場のヴィクターだが、ハクオロ王にしてサコミズ王! エルルゥもエイサップ鈴木くんもびっくりです。わざとやってるのか? (念のためにオフィシャルサイト見たら、生まれたてのひげ独身の人もいるし……。あとはなんだ、「おとーさん」の人を、まさにその台詞がいえる役で呼ぶとか、あれあれまあまあの人をその血縁に当たる役で呼んで、スタジオをリアルはらわたをぶちまけろ状態にするとかですかね?)。
 しかし楽屋落ち的な面白さをおいておくと、若干イコライズされた王様の声はちょっと聞きづらく、それでなくても言い回しが不自然で、読むにはいいが聴くにはつらい和月漫画の悪いところが前面に出てしまっている感があるのが残念。特に、しょっぱなの――そして、サブタイでもありテーマ的にも重要なフレーズでもある――「キミは誰だ?」が「……ミは……レだ?」みたいになっているのが痛い。ここは不自然なぐらい芝居がかってもいいから、じっくり聞かせてほしかった。ちょうど、クリストファーリーのサルマンがしゃべりだすときのように。

 声といえば、ドクトルバタフライが瀕死でパピヨンと語らうくだりは、なんか原作より憎めないお爺さんという感じでよかった。

 終盤のカズキの核鉄が真の姿を現すくだりは、パピヨンが拾い上げるドクトルの核鉄との照応のさせ方が原作より鮮やかで、なにが起きるか知っているのに、わくわくした。
 こういう「改善」ができるかどうかで「原作に忠実」系の原作ものアニメの存在意義が生まれたり生まれなかったりするのだろう。