第十二話

 柚木先輩が怖いという話。その限りなくジキルハイドな変貌ぶりは、「なんなの」という日野さんの気持ちにシンクロしない視聴者はまずいないことでしょう。怖いがなぜか笑えるという、やりすぎの楽しさ。

もっとも、真に怖いのはその後の保健室での、態度が「表」で発言内容が「裏」のエピソード。多重人格だったら、まだキャラとして笑えたのですが、どうも真性の暗黒王子である模様。最終セレクションまで日野さんが辞退しなかったら笑顔で指を潰しに来そうだな。「ミザリーって映画知ってる? あの映画で南アフリカダイヤモンド銀山で行われていたという奴隷への刑罰が出てくるんだけど……」とかいいながら。
ただ、単なる悪役ポジションでなく、「偽装」という日野さんの苦悩を鮮明に照らし出すキャラにしたのはうまい。今後は、主人公特権のスーパーポジティヴピュアパワーで「嘘から始まっているけど本気」である彼女の存在、ありかたを認めさせる展開になるのは想像に難くないけど、その屈折はツンデレというレベルではないので、月森を落とすより難しいそうな相手ではある。せいぜい「好敵手」認定させるぐらいか?

捨てる神はあれば拾う神ありの眼鏡先輩はいきなりバイオリンで励ましてくれるわけですが、そこで、いくら演奏は究極的には技術の巧拙ではなく「弾く側の気持ち」の問題だというような話になっても、それは彼女の問題の本質的な解決にはならないわけで(眼鏡氏は魔法でそういう演奏をしているわけじゃないしね)、その場しのぎにしかならず、何度目かのループに終わりそうな気もする。
つまり、現状打破には、より深い理解者の出現が不可欠なのである。
つまり、土浦くんあたりに秘密をばらす展開、ということだが、果たして?