第二十一章「戦士たち…」

戦艦のへさきのような頭の先輩に戦士の過去があったり、彼がマトリックスサイファー化したりする話。そして最終決戦前夜?

うーむ、非常に微妙なテーマの提示と話の展開だ。

まず、今までろくに性格付けされてなかったキャラが反旗を翻しても何の面白みもないという構造的欠陥もあるが、それ以上にこの手の問題の取り扱いとしてはアンフェアすぎるのがまずい。

マトリックスだと、デジタル世界が物理現実とほぼ近似という前提があったから、いろいろな意味で過酷な物理現実より、安定と安全と安泰を約束されたデジタル世界を取る人間の行動に説得力があったわけだけど、この作品の場合デジタル世界が欠陥だらけだから、二者択一とはとても言えない状況だし、その発展版ともいえる設問――人として再生するか複元者になるのか――にいたっては、そのふたつがほんしつてきにどう違うのかもはっきり見せてきてないのに(まさか外見が悪いから駄目とかいうつもりではあるまい)、復元者サイドを否定されても説得力以前の話でしかない。世界設定面で変にデータを小出しにしてきて、さらにいまだ隠し事が多すぎること、そして設定自体がブラックボックス的なものが多いことの弊害が思いっきり出た感じである。

一方最終決戦展開のほうは、シマ&シズノの秘密をまだまだ保持していくつもりらしく、これは、いい加減にせいという感じ(隠し事ばかりの司令と部下の関係は、この隠し事だらけのアニメと視聴者との関係に近似だったりするが、たぶんテーマ的になにか関係があったりはしないだろう)。

展開的にも、やらないっていったりやるっていったりして手のひら返しすぎなシマはあまりに馬鹿っぽいし、「では話そう」っていったとたんに「ぐふっ」って言って倒れるあたりになると、もうなにかのギャグとしか思えない。とつぜんあせってますみたいな描写を入れても、はいそうですかと納得するのはとても難しい。そして納得できても共感するのは不可能である。

このあたりの展開はこんな群像劇ふうに散漫に見せていくのではなくあくまでキョウの視点、キョウの価値観で整理していったほうが良かったんじゃないかと思う。キョウ視点に特化しておけば、情報の出し方の問題も、シマの不条理行動もみな、それにたいするキョウの苛立ちという形で視聴者へのストレスをだいぶ緩和できただろうし。

がしかし、「手札が出揃ってからが、真のゼーガペイン」ではないかと思うので、もうしばらくは寛容な心で見たいところ。