第十一話「射手座の日」

もうなんか本当にどうでもいい感じね……。

 なによ、オープニングのしょぼいCG。九十年台中盤のCG流行りたてのアニメみたいじゃないの。悪いけど今回一番笑ったのはあのCGだったわ!

 え? 高校生の作ったプログラムだからこの程度だ? 高校生が作った画像はモニター内のやつでしょ! あの二次元のやつ。
 なに、もしかしてそのショボさを反映した安いCGにしているとかいうの? 馬鹿じゃないの? だったらキョンたちの格好も合わせてチープにしなさいよ! その辺の駄目なコスプレショップで売ってるようなので。どうせだったらキョンたちもCGにすればよかったのよね。初期のバーチャーファイターみたいな感じで、風船に顔書いたみたいなキャラで。

 それぐらい徹底してこそパロよ! 有名作品を半端にナゾりゃいいってものじゃないの。
 過去の多くのパロディ作品がなぜ、一陣の寒気のする風だけ残して記憶の闇に葬り去られてきたのかわかってないわ! 「ケロロ軍曹」や「ぱにぽに」みたいに失敗も成功もお構いなくひたすら詰め込むとか藤子F不二雄大先生の「ヌターウォーズ」や「怪傑ライオン丸」みたいに都市伝説化するぐらいまで鋭く本質を見抜いて対象化するとか、戯作をするにもセンスってものがいるのよ

 それにしても、今回の話はなに? ハルヒは何にもしてないじゃないの! このままいくと私が一番主役らしいのは、オープニングだけってことになりかねないわ!
 特に今回は酷いじゃない? 主役は長戸、なんでしょ? タイトルロールはあくまでお飾りってわけなの?!
 フンだ! 大体ねえ……


……と、以上のようなことを言いそうな人間が、この地球上における人類の割合としては極小規模ながらゼロとはいえない値で存在し、それが具体的な姓名をともなって現前している可能性という点では実のところ100%ぴったり、ノミどころか原子も洩れでる余地もない確実さである上、この先の文言があまり公共の場で放たれる類のものでなくなる可能性のパーセンテージが、これまた物凄い数値を叩きだしているので、これから先は俺が語ることにする。

 といっても実は語ることはあまりない。
 というのもこの俺は何もしていなかったからである。もっともらしく長門に指図したりしてはみたが、長門が勝手に始めたことをただ承認しただけであるし、もし長門がそれをはじめなければ、PC研によるインチキに気づくこともなく、なすすべもなくやられただけであったのであろうことは想像に難くないのである。どころかそうなっているのが自然だっただろう。
 そもそも最初の段階で、パソコン以外の賭けの品物の設定を止めさせる――すなわち遺恨の源であるPCの返却か残留かにとどめる、というような良識がこの俺のキャラクター設定的には設定されていてしかるべきであり、確かそういう設定であったような気もするのだが、この時点においては不思議と忘れ去られてしまっているのであった。なに、キョンという男は結局口だけなのだ。そうモノローグを言う以外のスキルは基本的に備えていないのである。そうしないと、話がすすめられない以上、そうする以外ないではないか。お気にめさるな。
 そういうわけで、俺としては、俺が何もしてなかった、あえていうならハルヒよりも長門に萌えていた瞬間のほうが多かったな、という感慨以外は、キャラクターとしてのコメントは出来ないのである。
 考えてみると今回のストーリーってほとんど何もないんじゃないか?


……って言うことを、たぶん言う人がいるんじゃないかなぁって、思うんですけどぉ……、えっとぅ、キョンくん以上にぃ、わたしは出番がなかったのでぇ……。うぅうぅ……。だから機械は……。ってわたしはこの時空になにしに来たんでしょうぅ……。なんでキョンくんを好きになっちゃったのかもわからないままだしぃ……。


……なんてことを言う人は確実にいますね。ええ。それにしても前よりたくさん喋ってますね。大変だったでしょう。いや成長したものですね。
 え、で今回おまえはなにをしていたのかですって? 今回はですねえ、背景に徹してましたねえ。あ、五目並べをやってましたか。あと、「憂鬱」の展開のネタをばらすという重要な台詞もあったっけ。ハルヒさんの不満で閉鎖空間が出来るなら、「白雪姫」で示唆される内容はもう決まったようなものですよねえ……、お姫様はなにを待ってましたっけ? これって未来人の現在への不干渉ルールに抵触しないんでしょうか? 
 ま、それはさておき、そんなもんですね。今回は本当にうちの組織関係ないし。え? あってもなくてもどうでもいい話じゃないかって? いえそんなこと無いですよ。ハルヒさんが満足なら、僕らもいつも満足なんです。彼女が光……僕らは影……(設定的には、ですけど)。


……以上がシミュレートされた証言、計四種。

 今回のまとめ……

 パロディ……未熟。
 台詞……平均値。
 構成……起承転結の基本構成。当シリーズにおいては、「涼宮ハルヒの退屈」「ミステリックサイン」と同じ様式である。即ち、承は承といえるほどのものでなく、転はもっぱら解説によってなされ、結は人知を超えたキャラクターによる一瞬の終局。
 シナリオ的特色……ルール遵守、PC研の余裕の正体、長門に人間的感情の発生、の三点。ただしすべて台詞によってのみの無味乾燥な提示、「興趣ある」というレベルには未到達。
 ドラマ性……上記の理由により、ほぼ無し。

 構成人物の評価……

 涼宮ハルヒ……トラブル発生因子の限定発動によるエピソード構成必須事項即ち地球アジアア一部地域言語で言うところの「事の発端」を惹起せしめることに成功。総合時間1200秒のエピソードの進行の契機となることを持ってその役割を終了。背景の画像に吸収。
 キョン……司会進行。
 異時空存在……お茶汲み。
 超能力者組織構成員……キョンのゲームの相手。
 長門有希……長門有希が主役であることは一部視聴者にとっては快適。確かに涼宮ハルヒが全面にでる場合の快楽困難性を思うにあたりこれは一面の真実と推定される。が、綾波レイホシノルリといった長戸の異次元同位体の存在を知るものにとっては、既視感と呼称される認識錯誤現象に囚われて、葛藤ないし退屈を覚える模様。

 次回放映エピソード……第十二話。即ち第五話「憂鬱Ⅴ」が最終回と推定。第六話をDVDでやる計画?

 予感……あのね?


――追記――
これについても若干の反響がありました。
関心のある向きはこちらからどうぞ。