最終話「おしまいは完璧?」まで

うーむ。結局タイトルの意味は本当に序盤のネタだけだったのだな。まあもともと第一巻の内容に特化したタイトルだったのだろうし、それはべつに悪いことでもないが、終わってみるとやっぱり第一巻の内容(であろう)ところまでしか面白くなかった、というのはあまり悪くないとはいいにくいぐらいの出来でしかないのでした。
 いろいろ引っかかることはあるのだけど、何より困ったのは、学園ものプラス魔法ものと見せかけて『都市と星』とか『地球ヘ』とか『マトリックス』とかと同じ「完璧な管理社会と異分子の話」、ようするにSFだったというツイストを利かせる手際の悪さである。まず最初の「見せかけ」の部分の世界設定がうまく説明されずにはなしが進むのが問題で、ここをきっちり説明しておかないと、ひっくり返したときになにがひっくり返ったのかよくわからないわけである。とくにわかりやすく、わかりにくいのは(わかりにくい文章ですみません)、中盤以降の最重要要素であるこの世界における「神」という概念の位置づけというやつで、最初のほうで「私はなんとか神に使える〜」とか言ってはいてもそれが今日的な意味での「教徒」なのか、ギリシャ神話の世界のような教徒なのかが、明確に説明されないままだから、実際に「神の指令で暗殺をおこなう教団関係者」なるものが出てきたときにこれは悪いのは「神」なのか「神の指令を代行していると称する教団」が悪いのかの判断がつかない。これが判断つかないと、その後の主人公の「神に反旗を翻す」の対象が何なのかもわからないわけだ。譬えとしていってるのか、具体的な存在をやっつけるつもりなのか、わからない、ということである。そうしてどうにもはっきりしないまま、『神なんてものはいない、それはただのシステムだ』とか力説されても視聴者は『そうか神はいなかったのか』と驚くよりもまず『そうか、神はいるという世界観だったのか』と驚いてしまうわけである。これでは盛り上がりようがない。同じようなことはタイトルになっている「大魔王」という概念についてもいえる。魔法はみんな使えるのでことさら魔力が強くて性格の悪い人の喩え、なのかと思いきや、どうもそうではなくて、隔世遺伝で出現する文字どおりの魔族の支配者の転生体、とおもったら、ネオとかミュウとかユニークの同類でした、とかどんでん返しが一人くるくる回っているを見せられるようなむなしさがある。

 そのうえ主人公のキャラクターがどうにも微妙で、いきなり不良の足をベキベキ折ったりするだけでなく、「魔王」になってからは、序盤の愚直善人キャラはカモフラージュだったのではと思えるぐらい腹のそこがよくわからないキャラになり、ある意味設定以上にドラマが視聴者を置き去りにした原因はこいつのせいであるともいえるかもしれない。これくらい見ていてその去就がどうでもよくなる主人公ってそうそういない気がする。
ヒロインズはそれなりに描けているし、なかでもゴムゴムの実の力を持っているファンタスティックな生徒会長さんはかっこいいと思うのだが、よくみるとこのひと、ほとんど主人公とは関係のないところで活躍しているのである。エンディングの画像みたいに、主人公に積極的にモーションをかけるようなこともなかったし。
 男性陣で視聴者が一番理解できたのはやんすのブレイブだとは思うが、彼の正体を魔王が知ってるのかどうか、また、やんすのほうでも知られていると思っているのかいないのかがよくわからないとか、肝心要の部分の説明がへたっぴなので、結局魔王を食うほどの存在感はもてていない。

 悪役も残念なのばかりで、大ボスはアスラクラインでも見た気がする、やたらと世界に迷惑をかけるが根底の動機は個人的な恋心、という傍迷惑なかわいそうな人で、本作では終盤ねじりんぼうみたいになって倒れている姿が最後という設定以上に扱いのかわいそうなキャラではあったし、あとはこれまたよくあるやたらとテンションの高い変態(これはシャナとかにも出張しててもおかしくない)とかあからさまに悪いバカですみたいなつまらなさいっぱいの敵しかいないのはさびしいかぎり。バトル漫画の三分の二は悪役の魅力でできている、気がする。

 最後の最後、ループ的にまた序盤のハーレムラブコメに回帰する流れだったのは、まあ良かった。とはいえ続きをつくることになったとしたら、どうせまた新しい敵が出てきてシリアスぶって残念な感じになるのだろうから、すっきり終わっただけでも誉れとして欲しいような気がする。