第四話まで

放映時間と局は日曜日の『WORKING!!』と同じなのだが、そちらとは不思議なくらい対極にある作品。たとえば――

・『WORKING!!』のお色気はあくまでフェチな視線の誘導にあって下着や裸の露出等は一切無いが、『迷い猫〜』はあくまで下着や裸の露出のために一切の物語が誘導されている。

・『WORKING!!』の人間関係は少女漫画的に「誰がなぜ誰を好きになったか(あるいは好きであるのか)」の説明を比較的丁寧におこなっていくが、『迷い猫』は少年漫画に良くある「とりあえず主人公だからモテモテなんだよ!」といわんばかりの居直りが感じられる。

このあたりが顕著だが作劇面でも

・『WORKING!!』は第一話から最新話まで演出や作画が一貫かつ安定しているが、『迷い猫〜』は
出も作画も完全にばらばらで登場人物の性格まで一定しない。演出とコンテ担当が各話ごとに違うのだから当然ともいえるが、物語は一応繋がっているので、出来の悪いリレー小説のような態を示している(エンドレスエイトみたいな企画でこれをやれば面白かったかも)。

・『WORKING!!』の登場人物の自分語りはストーリーの進行に無理なく溶け込んでいて、程よい長さだが『迷い猫〜』の登場人物の自分語りは、今までの雰囲気をぶち壊しにする気合に満ちていて、しかもおまえは押井守アニメの登場人物かといいたくなるほどに、いつまでもだらだらと続く。


それ以外にも、

・『WORKING!!』のキャラクターはたいてい仕事をしているが、『迷い猫〜』のキャラクターはたいてい仕事をしないで暴走している。

・『WORKING!!』は都の青少年健全育成条例が改正されても生き残れる可能性が高いが、『迷い猫〜』、即効(自主的な)自粛の強制の対象になりそうである(都の回答例などを真に受けてはいけない)。

・『WORKING!!』のOPはワンワン言っているが『迷い猫〜』のOPはにゃあにゃあ言っている。


などなど挙げていったらきりがない。これが優劣の対比でないのはいうまでもないだろうけど、『迷い猫〜』の原作や矢吹健太郎の漫画版のファンなら、お色気面はともかく、シリーズ構成の面では『WORKING!!』と同じ道を行ってほしかった人が多いのではなかろうか。板垣伸担当の第一話のアッパーな雰囲気や大地丙太郎担当の第四話のバッドトリップ感あふれる脱力趣味は、ともに作り手の個性が、良い意味でも悪い意味でも前面に出ていて、それなりに面白く見ることはできたけど、このアニメでやることなのかというと疑問は残る。壊し続けるとなにが原型だったのかがわからなくなってしまう危険性は常にあって、シリアス方面のガイドライン的な第三話のあとで、すべてをぶち壊す第四話がきてしまうと、今後どんなシリアスを持ってきてもまともにとられないように思う(そういう意味では、並べて語るべきは『WORKING!!』ではなくて『Angel Beats!』であるのかもしれない)。

しかし逆に考えればこの手のラノベアニメのお約束ともいえる「前半お気楽コメディ後半いらぬシリアス展開で思いっきり盛り下がる」の冥府魔道をたどらなくてすむいい手段であるともいえ(だってシリアスは三話でおしまいだから、とね)、こういう実験的な試みもわるくはない、といえないこともない。さてさて。