第六話「お嬢さんお手柔らかに」

 マワリ空回り、という話。
 ようするに、幼馴染がぽっと出(彼女視点からして)のヒロインの存在にやきもきするという定番展開で、それをAパートとBパートで、それぞれひとまとまりにして、照応関係を持たせ、実質二部構成にしたてたものなのだが、その一部ずつの密度、充実度がすごい。Aパートが終わったところで、あいだにCMが入ってないのにもかかわらず、本編終了でそのままエンディングがはじまるんじゃないかと本気で思っていたぐらいのもので、ゆるくつくるスタッフだったら、このままのシナリオでも本気で二週分になってしまいそうである。
 シナリオの密度もさることながら、主人公がサンのトイレを覗いたと(なかば意図的に誤解した)花嫁の父が襲いくるシーンだけいきなり描線からカメラワークまで激変したりする、映像面での気合の入り方もたいしたもので、正直なんの新味もないラブコメ話(というかスラップスティックコメディ)も見せ方次第ということの証明のような回でもありました。
 内容的に特筆すべき点はといえば、やはり「親の視点」の存在だろうか。この手のラブコメといったら親は同居していないとかなんらかの理由で不在とかたとえそこにいてもかぎりなく空気とかそういうのものが多いわけだが、このシリーズにおいては、今回の冒頭のシーンが示すように、社会ととか家族というものがふいっといきなりそこに存在しているのではなく、過去からの蓄積によって存在している、という、当たり前ながら見過ごされがちな要素を示す役割を担っていたりする(そうすることで、作品世界の奥行きが文字通り広がるのである。主に時間ベクトル方面に)。もちろん、コメディ的にも、主人公のヒエラルキーの低さ――この夫妻は、やくざチームよりはだいぶ弱いのにもかかわらす、ナガスミは完全にやられ訳である――を強調する重要なキャラでもあるし。

 しかしこうも高速でキャラが増えていくと、キャラの行き来の整理がどんどん大変になりそうである。眼鏡の下がまったく見えない人とかもどうせレギュラー入りするんだろうし、野川さくらキャラも次回からだし、まわりさんが交通整理もしてくれるんでしょうか。