第一話

 夜から夜へ俺達は消えていく 夢から夢へ俺たちは走り去る
 幻想の翼を荒野にひろげて 壊れそうな歌を口ずさみ羽ばたくのさ。
 カタログを見ても幸せは売ってない 売り物の愛が表通り歩く
 予定調和を繰り返すユートピア 探し物はまだ見つかってない
 行き場のない昨日 さよならを告げて


 いきなりなんだとおもうかもしれないが、これはPhI(ファイ)というバンドのテーマみたいな名曲で、コードギアスの後にやっていた本作のCMを見ていて連想したのが、これと、あとバクチクの九十三年の傑作(『darker than darkness』)だったという話である。そのファイのヴォーカルはBTのヴォーカルの師匠筋・・・・・・と、ようするにとっても八十年代末〜九十年代のヴィジュアル系チックなムードが放映開始前からあったわけです。

 で、OP曲の担当はというと、予想通り……ではぜんぜんないが、ヴィジュアル系あがりのTMR西川貴教ヴィジュアル系調のハードロックで、見ようによっては想定の範囲内といえないこともないのだった。製作者的にもやっぱり前世紀(同音の全盛期でもよし)のヴィジュアル系テイストが意図されていたようである。当時の音楽がいまだ好きな人間にはこれは悪くない扱い。
 もっとも、OPのタイトルが出るところは、時代性も音楽性も関係なく作っている人だけカッコイイと思っている臭が充満していて、いささかきついものがありましたが。


 さて肝心の中身はというと、いまのところ、なんの臆面もなく菊地秀行です。

 「黒」はどうみても秋せつら(糸使いだし、「ぼく」と「私」バージョンがあるし、黒のコートだし)、Dの左手みたいな解説系の爺さん声のキャラがいるし、人形娘はいるし、「ヘルズゲイト出現」は「魔震」だろうし、と菊地作品のオーソリティというわけでもない人間の目からみても、それっぽいなーと思えるぐらいには似ているのでした(*)。

 菊地作品ほど美しさにはこだわらなそうだし、刑事パートにもそれなりに比重がかかってそうなので、ぱくりと言うよりは、菊地的な耽美アクションキャラというのは、山田風太郎の「忍び」バトルなみに共有の財産と化しているのかもしれません(ある種のソフトウェアのように――byギブスン&スターリング)。ただ、バトルの演出等が、全体にもっさり風味なのが気にかかるが、まだまだ黒は本気で戦ってないということなのだと思いたい。

 話のほうはまだまだどこへ転がっていくのかは未知数――事件中心になるのか、黒の行動原理を中心にすえたものになるのか、もわからない――なので、即断は避けたいのだが、とりあえず、けっこう粗そうではある(タイプ的にはBBBみたいな印象がある)。
たとえば、逃げている人は「偶然」李さんに出会いすぎなことに、気づくべきだと思います。あれではストーカーだ。李さんももう少しうまい遭遇のシチュエーションを考えたほうがいいかともおもう。

 (*)ちなみに、菊地が以前あしべゆうほとコンビを組んで発表した漫画『ダークサイドブルース』の主人公『ダークサイド』とファイのヴォーカルのイッセイ(ISSAY)はなんか似ている。