第十八話「枢木スザクに命ずる」

黒の騎士団の更なる強固な組織化の説明とランスロット狩り。

騎士団のほうは、話が進めば進むほど微妙な組織になっていき、先行きが恐ろしい。いい気になっている若造のボスが、老獪な腹心にすべてを奪われている――というのはよくある構図だが、それをやると肝心のテーマからどんどんそれていきそうで、そういう意味でも先行きが恐ろしい(すべてを失うには、まずすべてを手に入れていないとだめだろう)。
さらに、仮に志半ばでゼロがすべてを失うような物語に発展すると、ゼロの物語としての態勢建て直しは設定的にもシナリオ的にも困難を極めるのが確実だが、このスタッフだと本当に恐ろしいぐらい強引展開を辞さない人たちなので、その復権の過程が、ただのギャグアニメになってしまわないか、その意味でも不安がいっぱいである(いきなり、「そしてX年後」とかやって復活の過程をぶっ飛ばすかもしれないが)。

まあ、今後の展開の心配は置くとして、今回の展開がどうかというと、なんといったらいいか、視聴者の頭がぼけている深夜だからってこれはちょっと、というものでありました。

たとえば、ナイトに叙せられたにもかかわらず、姫君を守らず特攻する男、それがスザク。乗っている機体の名前が泣くぞ。そもそも、利他の理想に生きる男なんだか、そう見せかけてエゴの自殺願望くんなのか、作り手も態度をきめかねている気配が濃厚で、それがキャラクターのつかみどころのなさに直結してしまっている。
これはしかし、スザクというキャラだけが悪いのではなく、対するルルーシュのキャラも同じくらい、いい加減であることにも起因している――対置する一方が曖昧ならば、もう一方も曖昧にならざるをえないのだ――ので、いまさらシナリオライターががんばっても是正は難しいのかもしれない。あるいは、もしかしたら、すべて「計算のうち」であるのかも知れない。

そのルルーシュ――ゼロは、どうやったのか知らないが、謎の新兵器を用意、ぴたりとスザクを罠にはめる。(いま記憶喪失している人のお姉さんみたいなへんな科学者の存在もそうだが、このアニメ、ブラックボックスから物を出してくる展開多すぎ)。
ゼロの捕獲作戦の成功は、読みが鋭いというよりは、ルルがスザクの性格をいちばん良く知るものだから、ということなのだろうが、再会して以来スザクがルルの予想通りになったことなんてあまりなかった気もするし、このあとものこのこ出て行ってあっさりつかまったりしているので、捕獲成功も実はフロックに過ぎず、こいつはもしかしてチェスが強いだけの馬鹿なんじゃと思ってしまうところもあるがどうにも困ったところ。(新兵器で捕獲したあとのことを考えられない読みの浅さからするとチェスも本当に強いのかどうか謎だ)
 ドラマとしては、前回に続いて、もっとも味方とすべきものを敵に回したルルの葛藤、がメインなのだろうが、上記のごとく、お話が間抜けすぎるのと、キャラクターの描出がいまいちなせいで、どうにもこうにも盛り上がらない。『奏光のストレイン』がシンプルなシチュエーションでもしっかりサスペンスを作り出せていたのとは対照的だ。かならずしも視聴者をキャラクターに肩入れさせなければならないということはないが、物語における戦いとは実際のところ「主張と主張のぶつかりあい」であって、戦闘描写は「外装」に過ぎない以上、ルルの考えもスザクの考えも捉えがたい現状では、どんな戦いであっても、所詮、空虚なものになってしまうのだ。

唯一、軍が、スザクをいけにえに黒の騎士団の殲滅を狙う、というシークエンスは、かれらがじつはたいしてお姫様を重んじていないこと、最強の兵器とそのパイロットより自分らの縄張りの確保を優先すること、といった、さりげなく生々しい「大人の主張」が見えて面白かったのだが、「子供代表」のようなユーフェミアとの対比がうまくいってないし、続く展開のトンデモぶり――目視して迎撃できるロケットミサイルの弾幕とか、テレポートでもしてきたみたいな兄殿下の旗艦登場とか――と、夾雑物が多くて、印象的な展開になり損ねているが惜しい。
 お話的にはそれっぽい、というだけでなく、ユフィーのキャラクターに大きな変化を与えそうな重要なくだりでありそうなのだが(「ランスロット」を騎士にしたという時点で、彼女の未来は「王からの離反」に決まっているはずである)。

さて次回、兄殿下の登場で事態は無駄に混乱していきそうである。