第十六話「囚われのナナリー」

正式名は「生きてゐるマオ」。はっきりいって囚われていたのはナナリーじゃなくてシャーリーでもカレンでもいい話です。

だんだんストーリーアニメというよりは、一話ごとのクイズアニメみたいになってきた。
どんなクイズかというと、腑に落ちない展開の穴埋めとか、そもそもいったいいくつ腑に落ちない展開があったか、とか。

今回でいうと――

1 蜂の巣にされたマオはなぜ生きていたのか? 
2 ブリタニアの医学とやらは、つけられて数日しかたってない傷をほとんどふさぐようなものなのか?
3 マオをわざわざ治したのは誰か?
4 心を読まれたからってチェスに負けるわけでもないのに、そして自己洗脳で作戦を憶えていなかったのに、なぜルルは負けたのか? 
5 チェスは駒取りゲームではないから、盤に残っている駒が少なくても勝ちというケースはありえるにもかかわらず、そのことに「チェスの天才」が突っ込まないのはなぜか。
6 かりに駒取りゲームだとしても駒の重さが種類ごとに違うのが考慮されていないように見えるのはなぜか。
7 そもそも、空の天秤の片方に一齣置いたら「天秤なら」それだけでゲームオーバーになるほど大きく傾くはず。あれは本当に天秤なのか?
8 監視カメラを仕掛けるぐらいに疑っているのに、出歩ける環境を用意するテロリストってなに(顔と所在がばれたうえ逃げられる可能性とか外に連絡を取りにいく可能性は考慮しないのか)?
9 自分にギアスを仕掛けていたが、その解除は偶然なのか意図的なのか。意図的だとしたらキーは何か。
10 マオは一人でやったとは思えないぐらいこまめにトラップや監視装置を仕掛けていたが、それでどうやるとスザクが爆破装置を解除するのを見過ごすことが出来るのだろうか。
11 スザクは『YASHA―夜叉―』の伊藤英明か「FreeYourMind」したキアヌーリーヴスみたいに壁を走っていたが、あの世界の軍人は壁を走る能力は標準装備なのか? これもブリタニアの優れた科学?
12 中国へ行ってなにかしてとんぼ返りと忙しいシーツーは教会の外でわざわざ待機していたのか。
13 シャーリーの記憶喪失を「ルルとは他人ごっこをしている」で周囲が納得する、と考えるルルは正気か?
14 シャーリーの記憶喪失を「ルルとは他人ごっこをしている」で周囲が納得する、というシチュエーションに視聴者が納得すると考える脚本家は正気か?
15 マオがまた「ブリタニアの医学のおかげ」で出てきたら、面白いかも。
16 第八階層とか第七階層とかいったい影の騎士団何人いるんだよ。
17 ここで中田譲治が裏切ったら、おそらくルルはなにもできないのでは?

このうち、今後の伏線になりそうなのは3と11、17ぐらいだろうか。もっとも、3のほうは、マオを意図的に直した存在があるとするとギアスやルルーシュについての情報を手に入れてそうで、そうなると今後の展開がますます「新たなる刺客登場&強大な障害あらわる」パターンになって、ルルーシュの「反逆」を描くという当初のコンセプトからどんどん遠くなっていくのだが。
9はあるいはシャーリーの記憶喪失がらみの伏線といえないこともないが、なんの条件もなく記憶が戻るなら、いろいろとやばいぞう。期限付きだったらもっとやばいけども。
11はスザクが改造人間だったらある意味面白いかも。

4に関しては、ああいうボードゲームをやらない人はピンとか来ないかもしれないが、チェスや将棋における「読み」とは基本「最善手」を想定して思案する――つまり、相手の差し手のうち、有効と思われる手を読んでそれに対する策を考える――ものだから、つまりマオにルルの思考が読めたところで、「ルルの考えるマオの打って欲しくない手」が読めるとは限らないし、「ルルが読んでいない手」をあえて選んで打ったとしても、それが考慮に値しない悪手であるためハナから想定されなかったのか、うっかり見落とした妙手、好手であるのかは、素人であるマオには指してみないとわからないし(打てば、ルルがその手を「評価」するからわかる)、現実的にいって妙手の数に比べて手の数のほうが圧倒的に多いのだから、自然、まずい選択をしてしまう可能性のほうがはるかに高いだろう。そうして、悪手ばかり指していたら、いくら先読みが出来てもやがて将棋で言う「必至」すなわち、いくら最善手を打っても詰んでしまう局面に辿り着いて負けるし、仮に運よく妙手であっても、幸運がずっと続かないかぎり、いずれ確実に悪手を打って形勢を損なうだろう。また打ち手を、ルルの読んだ有巧打の中から選んでいく戦法を取っても、打ち筋に一貫性がなければ、攻撃も防御も散漫になって、いってみれば出来の悪いプログラムみたいな打ち方しか出来ないはずである。マオの勝ち味は限りなく薄い。いや、そんなのに負けるなんて、じつはルルは大して強くないのかな?

テーマ的には前回分で描いた「母の深い愛」的なまとめ方で、それ自体は悪くないのだが、前回やり損ねているせいで凄みもないし、一話おいてしまったので、悲しみの描出も弱い。そもそもマオというキャラが状況変化と秘密暴露のためだけに出てきたという印象がどうにも拭えず、その退場のご都合で殺させたようにも見えるため、「感動」とは程遠い終末になっております。このあたり、せっかくゆかなをつかっているのだから、もっと鮮烈な場面にも出来ただろうに。もったいない。