第十三話「シャーリーと銃口」

 前回の身近な人間の犠牲を経ての、テロリストとしての決意を問う話。

 話としては、まだまだ幼い主人公が、目的にかなう力を手に入れて戦闘を開始したはいいが、なにが起きるか読みきれてなかったがゆえの動揺をのりこえて、より非情な戦略家へと成長していく過程、ということになるはずなのだが、どうにも上手くいっていないのは、そもそもルルーシュの描き方が、ヘタレだったり無敵だったりと統一が取れてなかったためだろう。その目的がいまだ「反ブリタニア」とか「打倒若本皇帝」とか「ナナリーの居場所確保」とか抽象的なお題目の域を出ていないのも、ドラマを脆弱にしている要因といえる。黒の騎士団とは、彼にとって単なる手駒なのか、あるいは、それなりに尊重すべき仲間なのかすら見えていないのだ。せめて、彼がどう「思おうとしているのか」ぐらいは明示すべきなのに(本心と一致している必要はない。本人が本心に気づいてなくてもいいのだ)。
 結果、たとえばルルがカレンに向かって語りかけるシーンが、彼が上半身はだかになっている理由がわからないというだけでなく、一連の問いが、カレンの意志の鼓舞のための綺麗ごと(本人は信じていない)なのか、自己暗示的な目的を含んでいる(つまり、けっこう本気で語っている)のか、その意味合いが不明瞭になってしまうのだ。おそらく大きな分岐点になるはずのシャーリーとのシーンをクライマックスに持ってきている以上、あそこでルルが自ら定めた――あるいはそうしようとしている――立ち位置がはっきりしないのは、ドラマ的に非常に損失ではないだろうか? ゼロにとって、その正体を知ってしまったシャーリーの価値がどれだけのものか、見る側に推測しづらいから、場面の意味するところが非常に曖昧なのである。
 まあ、それでもテーマらしきものが把握できるだけでも、吉野弘幸のシナリオにしてはまだまともなほうといえるかもしれない。ストーリーも、偶然の一致もあまり多くないし、ご都合主義もせいぜい、ルルがその辺の女子高生にあとを付けられるようでは、とっくに尻尾を掴まれているだろうとか、シャーリーと同じレベルでルルを見失ってどうする軍人とか、天下のテロリスト様の素晴らしい作戦である自爆偽装が他の人にあっさり読まれているとか、その程度だしね。

 新OPは風邪を引いたクリリンことZINでしたが、前のFLOWといい、曲調に幅のない人たちばかり集めてますね。それぞれ、エウレカのとブラッドプラスのと入れ替えても、違和感ないぞ、きっと。
 さて次回、シャーリーを殺せるかどうかで、ルルのではなく、スタッフの覚悟が問えると思います。どうなるかな?