第十四話「乙女心のカプリチオ」

なんですかこれは。けしからん!

女子キャラが一挙に増量されて、「よく気の利く(そしてたぶん兄好きの)妹」に「和服が似合う婚約者」「中学時代の彼女」と、一体どこのギャルゲーだという風情になっております。じつにけしからん!

 もちろん、本題はそこじゃなくて、柚木君の「調教」がメイン。
 さりげなくしかし的確かつ容赦なく、柚木の隙をつく日野さん。フラグ立てというより、蝶を虫ピンで壁に縫いとめていく感じである。気がつくと、日野さんの呪縛にとらわれて身動きが利かなくなっている、という算段。鬼である。

 柚木先輩が黒い裏人格をつくった理由は作中で明快に示されているとおり家庭環境から来る自己防衛で、つまり、その凍った精神を日野さんの光に照らされてすこし溶かされていく役割担当なのだった。主人公に負けて最強の味方になる敵みたいなもので、棗(学園アリス)を連想したのは、あながち的外れではなかったと。婚約者関係で、そのけっこうどころか相当優しい本性をちらつかせるのは、ベッタベタですが効果は高い。いってみれば、落差の問題なわけです。あげて落として、またちょっとあげる。結婚詐欺師のよくやる手口といえないこともないですが、ハードボイルドものの基本でもある。「タフじゃなかったら生きていけない、やさしくなかったら生きる価値がない」とか、「さよならをいうのは、すこしだけ死ぬことだ」とか「酒は胃にあいた穴をふさいでくれるが、心の傷はふさいでくれない」とか。
なお、この手のキャラでなんとなく連想するのは、遥か過去のあれです、キース・アニアン。いや、キースは日野さんぐらいでは隙を見せないか? ジョミーイコール日野さんとすればつじつまがあう、かもしれない。そういえば、テレビシリーズ化されるらしいですね、『地球へ…』。あの、どう読んでも確実に意味が通じないところが出るという、ある意味無敵の謎エピローグはどうするのだろうか……。
 閑話休題
なんにせよ、日野さんが救い主、癒し手であることは間違いないわけである。

 そしてなんだかんだで柚木邸まで押しかけてくる月火水土。さりげなく土浦が月森扱いをマスターしていたり、火原がもはや初恋の小学生みたいになっていたりと(ある意味すごい高校三年生だ)、初期とは勢力関係が激変したやり取りが面白い。そろいの和服は妹さんに借りたんでしょうね。なかなかしゃれのわかる人です。婚約者候補の人共々レギュラーになると面白そうなんだけどね。日野さん以外だといちばん柚木の正体に肉薄してそうだし。よくわからないがマリ見てのキャラを連想する雰囲気でもある(お嬢様が通っている高校なだけに、女子高なのかもしれない)。

 ラストは次回への引きで、日野ちゃんが男どもの彼女と間違えられるイベント二連ちゃんはまあいいとして、その間違えた土浦モトカノ(柚木関係の二人に比べて若干デザインが雑な気がするのは、庶民だから?)は、一過性の台風っぽいが、さてどんな感じになりますやら。

日野さん、同時攻略をやりすぎてイベント処理がどんどん複雑になっております。