第十一話

箱根戦の続き。

今回最大の驚愕は、「高度な戦略家」という設定のゼロがランスロットの出現を想定外にしていたことである。
ええと、これはあれですか、ルル君は自分に都合の悪いデータ(敗走)についてはバイアスがかかってしまうタイプっていう描写? 敗走という事実を消したい、敗走の原因となった敵の存在を忘れたい、敵の存在を忘れたいから、計画立案時もその存在を想定したくない、そいつの出現の可能性を想定できない、よって本番でびっくり? 
これでは信じてついてきた部下がかわいそうだ。詐欺にあうのは被害者側にも隙があるというのはまあそうなんですが。

とはいえ、映像作品としてはけっこういける出来だった。もしかしてシリーズで一番アクション方面では充実していたかもしれない。
いやみな言い方をすれば、どかどかロボットが出てきて、バンバン打ち合う場面が多かっただけでアクションものとしての工夫は乏しいのだが、それぞれの陣営の目的が明確、という作劇の基本がきちんと抑えられていたから、派手な画面がただの賑やかしに堕していないのだ、ということは忘れてはならないだろう。
これはもちろん、当初の目的はなにひとつ果たせず、やったことはいえば、おもに箱根の町を破壊しただけなのに、なぜか意気揚々のあんぽんたんチームの場面をのぞいて、ということだが。
ひょっとするとルルーシュ抜きで、愛国チームと占領チームの戦う話にしていれば、もっと重みのあるアニメになったかもしれない。まあ『五分後の世界』のロボットアニメ版みたいになってしまうかもしれないけど、いまよりはだいぶましな気がする(念のために書いておくと、五分後の世界は名作でもなんでもありません)。

しかし、このアニメ、木村貴弘にCLAMPという濃いキャラクターデザイナーを擁しているわりにキャラが弱いですな。いやむしろ、外見の濃さに作り手が安心してしまって、いまのしょぼいキャラ描写につながっているのかもしれない。安心が慢心を呼ぶというやつである。ギアスに頼っている馬鹿と同じですね。
たとえば、敵の現時点での大ボスであるコーネリアのキャラのしょぼさは何とかならないのか。今のところ、最強の障害(ナナリーを除く)であるはずなのに、あれではルルーシュよりもう少し目端の利くというだけの基本蛮勇きどりのおねーちゃんでしかない。
芝居がかった言動が、そういうキャラであるというよりは、「演じて」いるように見えるあたりは、ルルーシュや若本パパと同質で、そういう意味では血が争えない感じをよく出しているといえないこともないが、これがたとえば真にクシャナのようなキャラならば、彼女を守るべく必死な部下たちの気持ちもよくわかって、かつ、そういう「悪党でない」敵を排除せねばならないルルーシュの覚悟も見えてくるから、ドラマとしてもより緊迫感が増してくるのだろうと思うのだが。
 まあ、そういうまともな敵を創造してしまったら、今回もまた何の学習能力もなくピンチになり、ゆかなママの救いの手がなければまずいことになっていたであろうルルーシュ君ごときでは、到底太刀打ちできない強敵になってしまい、お話が立ち行かなくなることは、容易に想像できることではあるが。

だからといって、今後もずっとこの接待ゴルフのような、お誂え向けの馬鹿敵ばかり出してお茶を濁していくわけにはいかないのではなかろうか? あ、ユフィーがそれなのか? いや、あれは簡単にイレブン側に肩入れしそうである。
さて。