第九話

 まりやの煩悶と、あれがフェイクでなければ貴子さんに性別がばれそうな第十話。あれ、貴子さんがヒロインなのか? まあ確かにまりやは「いつも気さくに付き合っているが、じつはずっと主人公への恋心を秘めており、そして振られる」の男向けハーレムものの定番っぽいキャラではあるけど。
 そんなまりやのいってみれば振られる前段階(自分だけの瑞穂ちゃんでない、一人の人間ひいては異性としての瑞穂を、再認識する)の描写はいささか説明的にすぎる気もするが、悪くない。
 ロミオとジュリエットを、シェイクスピアのをそのまま使わないとしたのは(でもどうやら、完全オリジナルではなくて、リライトレベルである模様)、脚本の都合でキスシーンとかベッドシーンとかを配置できるからだろうが、どうせそういうことにするなら、内容にふさわしいオリジナルシナリオをあのネギまの夕映みたいなキャラが作ったということにすればよいのに、と思わないでもない。というか、文化祭で主人公とヒロインがロミオとジュリエットを、という展開は新鮮味がないにもほどがある。

 しかし恋愛ものとして今後ネックになるのはやっぱり、主人公が、皆を騙しているということについてどう思っているのか、というのがはっきりしないところだろうか。家の命令でもあり自分なりにも目的があったらしいとはいえ、やっていることはやっぱり性別詐称なわけである。バリバリの性犯罪者として、お縄にかけられても申し開きの術はないのだ。。そしてなりより「真偽」の問題があるわけである。皆の手本になるエルダー(お姉さま)に「なりすましている」ということをさてどう処理するのか。いや、この数話を見るかぎり、もうなんか主人公は心も限りなく女になっているような気もしないでもないから、騙している自覚すらなかったりするのかもしれないが、どちらにしても書きこみ不足なのはいなめないところ。