第六話

夏といえば避けて通れない、水着の話。
と同時に女装ネタでは一番避けたい箇所でもある。ホルモン異常で体型まで女性化しているとかならともかくも、完全無欠に男性である以上、ルックスは女顔とか、大まかな体型は服で誤魔化せるレベルとすれば、女装に成功していると言い張ることもどうにかできるけど、いくらなんでも水着を着てもばれないのはありえないからだ(冒頭のばれない水着モードもけっこう危ない)。

てなわけで、生理ということにするのだが、生理というぐらいで恥ずかしい青少年がいるのだろうかと思わないでもないところ。いまどきは普通に話すことだよね? いやまあ別にリアルな女子高を描くつもりもないのだから、男のほうだってこれでいいのだろうということもできなくもないが、純情にもほどがあるのではなかろうか。
 どっちにしても、生理というだけで一週間(長くて二週間)ぐらいならともかく夏中プールに入らないのは難しい。

 そこで、今回のメインは貴子さんとまりやの出番となるわけですな。 対立関係から、話題があさっての方向にずれて、そのまま問題がうやむやになる、というのは、じつはこれ、作中のことだけでなく、作品自体にも言えることなのである。まりやが勝とうが貴子さんが勝とうが、嘘の信憑性が増減するはずもないのだ。

その発端たる、貴子さん対まりやの話のずれ方はけっこう楽しい。ポイントはここでまりやが半分ぐらいわざと話をずらし、律儀な貴子さんはずれた話題にも付き合って(ずれたことに気づいてなかったりするのかもしれないが)、かくの如し、と思わせるところか。確立したキャラクターの正しい運用法である。そういう努力を見るにつけ、多少強引な誤魔化しかたにも目をつぶろうかなという気になるわけである。

 その後の展開とまとめ方はオーソドックスもいいところで、なんの工夫もないけれど、ここは変にひねって得のあるところでもないので、これでいいのだろう。

 かくして、義務にして重荷でもある水着話を速やかに消化し、秋に話を移すのだった。