第三話「愛しのけいちゃん」

第一期、二期通してシリーズで最も恐ろしい回であった。どれくらい恐ろしいかというとミザリーの映画よりも原作よりも恐ろしい。
まず、なんといっても主人公が恐ろしい。
自分でやっていることを本気で良いことと考えているのか、何かの代償行為を自己暗示ですばらしいものを思い込もうとしているのか、それすらはっきりしない。そして本人が自分のやっていることが周囲にどう見えているかをちゃんと判っているのが恐ろしい。なぜってその上で完全に自己を肯定できるというのは、つまり外部から手の内ようがないということだから。言ってみればひとりカルトである。
けいちゃんも恐ろしい。過保護に育てられて、依存が当然になってしまっている一種のジャンキーである。
この二人が生み出す「日常」も恐ろしい。破綻が見えているのに、二人とも笑顔なのだ。
このシチュエーションの怖さに比べれば、けいちゃんの死も、地獄チームによる復讐(というかほぼ八つ当たり)もホラーでもなんでもない、ある種サイコエンドとも取れるラストでさえ、たいしたことではない。というか、主人公の復讐の矛先が二股女にいくのはちょっと無理があるような気さえする。二股で地獄行きなら、地獄はあっという間にいっぱいになってこの世はあっという間にロメロのゾンビワールドに変じてしまう。はっきりいって、あの女でなくてもけいちゃんが幸せになることはまずなかっただろうから。

だからもしかしたら、復讐の対象は自分自身なのかな、と見ているときは思ったのだった。けいちゃんを不幸にしたのは過保護にしすぎた自分であることをうすうす気づいていて、地獄チームの制裁と地獄流しにより真の敵に復讐を遂げた恍惚感に満ち溢れて地獄に落ちていく――という、シリーズ最悪の後味で終了する話なのではなかろうか、と。

まあ本編は、もうちょっと安易なサイコものっぽいまとめ方でしたが、どこまでもどんよりと終わる、このシリーズの醍醐味は堅持されたのだった。

ちょろっと出てきた、謎の新キャラはちっちゃいな。冷羽の位置じゃないのかな。散っちゃいけど強い系か? エンドカードからするに眼は猫目の異形のようだが……。