第二十二話「ジンフェータス」

シマの正体、そして最終決戦。作中キャラも言っていたことだけど、コピーは出来ないがクローンは出来るとかもうわけがわからない。確かに、物理現実でも可能な遺伝子のみのコピーでゼロから育てるという類の「クローン」ならば可能ということもできるだろうが、それでは知識や思想のコンバートはないから、何の意味もない。同世代の優秀な仲間を探したほうが早いし楽だ。
であるから、それはそういう意味でのクローンではなく、限りなくコピーに近いクローン、というかそれはコピーだろうといいたくなるような――つまりこのアニメオリジナル用語としての――クローンであるはずであり、そうするとこんどは、それは量子データのコピーの不可能性という作品の基本設定は壊してしてしまうという、とても困ったことになるのだけど、このスタッフ、そこをどういいぬけたかというと、「未来の技術だから出来た」という、まるで流水大説のような説明に逃げるのだった。構想段階で設定をちゃんと練ってなかったということはまさかないだろうから、これでも立派にSFでございとスタッフは思っているのだろうが、根幹のロジック以外は「高度に発達した技術は魔法」的なノリでビジュアルイメージ優先に押し切った『ノエイン』より遥かにSFじゃない気がしてくるのは、一体なぜなんだろうかね?

さてかくのごとく怪しくなってきた設定説明でもって、視聴者になにを見せたかったというと、「シマも頑張っているんだ!」ということだけ。ええと「彼は病気なんです可哀相でしょう」というのとあまりかわらない。どころか、クローンごときに人類の命運を左右する作戦の立案させた危険なんじゃないかと思う人もいそうではある。だって、現実のクローンはいざ知らず、少なくてもこのアニメのクローンキャラのの代表的存在であるガルズオルムの皆さんは「クローンであるがゆえに生を軽視する存在」として描かれてきたわけなんだから。
しかし、オケアノスの皆さんはそういう方向にはまったく思惟が働かないようで、信頼回復一致団結特攻覚悟で意見は固まる。ちょっとびっくりである。皆さんずいぶんと人がいいことでございます。ありえないぐらい純朴とか思いたくなるが、シマはそういう人ばかり集めた、という話なのだろう。もしかして、これ、ずいぶんと黒い話なのか?

脇筋では前回サイファー化したクロシオ先輩があっさり悔悛。なんだよいったい。まあガルズオルムに下るメリットがよく見えないのに、いきなり降伏を提案する、よくわからない思考回路の人なので、前回の発言もいわゆる「言ってみただけ」的な気まぐれであったあのかもしれない。

あと、これは脇とはいいにくいが、リョーコさんはどうも日常モードでも感情が出てきているような。感情が存在しないのであれば、芽生えさせてしまえばいいじゃない、というところ? このあたりも先の科学的に中途半端な説明が足を引っ張っている気がする。

中盤のゲームのミッション説明モードのような長ったらしい作戦説明を経て(現実に発売されているゲームのノリの再現なのでしょうか?)。作戦開始。ここでまたとつぜん名前つきのキャラが乱舞するけど、これはゲーム用のキャラだったりするのかな? 魔女ならぬ、電子の妖精ホシノルリがいたから、捨てキャラっぽくはないし。
CGアクションは初期に比べるとずいぶんと迫力がでた気がするのだが、話がさっぱり盛り上がらないのでやっぱり盛り上がらないのだった。

かくして次回、人類共通のロマンの地。月の暗黒面へ!