第九話

 “小さな恋のメロディという映画を見たことがあるかい? 
  みたことがないならすぐに見たほうがいいぜ。
  あの二人がどこへ入ったか
  きっと地獄なんだわ!”


思わず二つのバンドが混ざってしまった(*)が、なぜかオープニングは『小さな恋のメロディ』でした。この作品、以前書いたようにフォーマットが寅さんで、ネタがここにきてまた映画。素奈緒は実は演劇ファンじゃなくて映画ファンなのか?

というのはともかく――
ようやく話が演劇部に戻ってくる。徐々に生徒会長の支持者がいなくなっているという話でもある。まあ悪役の天下は長くは続かないものであるし、当然のことでしょう。
そう、生徒会長は悪役――それも、コメディリリーフとか愛すべきライバルというレベルではなくて、どちらかというと水戸光國や遠山金四郎に懲らしめられているのが分相応な感じがする、小さい悪党である。同じお邪魔キャラでも、素奈緒が好きで好きでしょうがないからちょっかいを出している、とかそういうことにしておけば(要するに一種のツンデレである)、同じようなストーリーでも彼女にもそれなりにファンがつきそうなものなんだけどねえ。スタッフにはそういう思いやりはさっぱりないのだった。

 そして前回の妙な引きがラストで炸裂するわけだが……、レオと素奈緒のスーパーでの遭遇の仕方に工夫が無さ過ぎで「買い物中に偶然一緒になる二人」というシチュエーションのパロディみたいにみえてしまう上、クロガネ先輩にコメの品種を言わせるのが超強引だったりと、作る側に何の努力も見えないのがある意味素晴らしい。

 しかし蟹(関係ないですが、相変わらず舌が回ってないですね、この人。「カネ」だか「カニ」だかわからん)やクロガネ先輩たちはそれなりにツンデレ(素奈緒に対して)だったが、素奈緒はレオにはほとんどツンデレじゃないような……というか、ツンデレってツンツンデレデレされる男視点に立ってはじめて「ツンデレ」といえるようなものであるような気がする。ツンツンデレデレするキャラ視点だとようするに躁鬱煩悶思春期葛藤劇なのですね。ある意味『僕等がいた』とかに近いラインなのだった。

 とここまできてようやく気づく。
 これ、エロゲーという、ある種ハーレム物の温床とも言えるジャンルの作品を元にしながら全然ちがう方向性を持つ作品に仕上げる、とてもパンクな企画であるのかもしれない。



*念のために書いておきますと、ブランキー筋少です。