第一話

 ことの真相を予想してみる。

1、眼がさめたところから全て男の妄想。
2、念の入ったドッキリ。
3、新手の詐欺。

 さあどれか。

 考えてみるまでもなく1である。
 だって、この手の展開に必須の闖入者が何者か、何のために来たのか、一緒に暮らしていいのか、という、「夢のような現実」と「夢を否定する常識」が主人公のなかでせめぎ合う描写がほとんどないんだもの。

サンタ「サンタでーす」「ちょっと時間がかかっちゃったけど、君が頼んだことだし」
自称妹「妹をしにきました!」

男「そうだね」「むかし願ったことだしね」

 これで終わりなんて、まともな人間ならありえません。つまり、これは夢なのだ。人は夢でだけ、次々に起こる異常事態を、「無感動に受け入れる」ことができるのだ。

 だから、見ず知らずの娘に何着もの服を、それもかなりの額をはたいて買ってやれるし、これまたけっこうな値段したはずの、ブローチをあっさりプレゼントすることができるのだ。夢ならではの、太っ腹、後先考えなしである。おそらくこの男はこれから十話以上、あるいは二十話以上、この都合のいい夢を見続けるのだろう。

 そもそもまともな人間が、あんちょこをみているから君の名はチョコとかするわけがない。ペットに名前をつけるんじゃないんだからさ……。

 とまあ内容はそういう感じなわけですが、作り手的には、そういう夢みたいな状況をいかになめらかに駆動させて、どれだけ素敵な夢イベントを積み重ねられるかに全てがかかっていると思うので、逆に言うなら、総体としてはいくら破綻していようが、ありえないネタがあろうが、問題ではないともいえる。
 ただ、演出意図がなんとなくちぐはぐな気がするのはちょっと気になる。突然ぐにぐに動かしてみたり、静止画をねっちりおってみたり、といってそれが緩急のバランスをとっているようにも見えないし。
 話は夢でもいいけれど、表現手法まで夢でやられると、それはちょっとアンダルシアの犬です。