第二十三話「せめて哀しみとともに」

 タイトルは、ルルーシュ悪くない路線むき出しでこまったものだが、本編はというと、ようやく、俺様ルルーシュブリタニアがいかにして悩むのをやめ、「修羅の道」を愛するようになったか、という話でした、といってあげたいところだが、「JC.C.! 俺はブリタニアに戦いを挑むぞー」と意気軒昂だったいう第一話のあとで何をやったのか、スザクがランスロットの搭乗者と知って「裏切ったな! 僕の気持ちを裏切ったな!」と周章狼狽していた次の総集編でなにを言っていたか、そして、ユフィーの特区東京構想について「おまえはすでに間違ってる」と自信満々だった次の回、何が起きたか、と数ある前科を鑑みるにつけ、結局、次回また、殺し合いなんてしたくない的な弱音を吐いたりしてもぜんぜんおかしくないとしか思えない、程度の半端なシリアスぶりで、笑わせくれたのであった。
 そも、修羅化したのが、覚悟を決めたのではなく、成り行きに持ち上げられて自暴自棄に陥っているだけにしか見えないという時点で、「反逆のルルーシュ」でもなんでもないのでした。
だって、東京租界にもっとも護るべきナナリーやクラスメイトがいることは、わかってるんだよな? 防壁を破壊したら暴徒がなだれ込むことだって、「クリアに」計算済みのはずであるし、その暴徒はなんと、ブリタニア軍の正規軍とぶつかって撃破できるぐらいの戦力と統率力、そして知略をもった集団であるわけだから、その辺の学校の警備兵はなんて何にも役に立たないことだって、むろん計算済みであるに違いない。
 つまり、もう至上目的が放棄されていると――少なくても今回を判断する限りは――そういうことになる。替わって、治安という形での平和の否定、革命という名の破壊衝動の肯定が、ルルーシュを規定しているのである。
 こんなやつに、「俺たちは弱者の味方だ」などという資格はないのだが、そんな単純なことすらわからないあたりが、ある意味ルルーシュらしいといえないこともないが。それはただの暴走のルルーシュであるのだった。

 さて、ミスター正論にしてミスターセルフディストラクトこと、スザクくんのまえにもCCタイプの異能力者が接近。なんだか、CC対VVのチェスであるような気がしてきましたが、こういう風に周囲の状況の変化でドラマをでっち上げていくと、メインテーマはどんどん薄くなっていくんだけどなあ。

 それにしても、後出しで露骨に矛盾が生じる設定を繰り出すのは、週刊連載漫画でもないのだから、もう少しどうにかならないのか。当人の意思に協力に反したことにはギアスは利きにくい、というなら、第一話で集団自殺した皆さんは、あれは全員自殺志願者だったのかね? あの世界ではどうか知らないが、こちらの世界では普通、自分を殺すと言うのは人類の振るう行為のうちでもトップクラスで本人に忌避される行為である。

ルルーシュが一人盛り上がって「続く」なのは、思うさまダサいが。彼の行動の根底にあるものがなんだかんだで自分の問題でしかないという、基本的にエゴの男の終わりの始まりとしてはそう悪くない。始まりならばの話だが。

ときに「合衆国日本」といってしまったルルーシュは、合衆国というのが、現在日本で使われている言葉と同じ意味ならば、じつはチェスがへっぽこなだけでなく、現代史の勉強もへっぽこだったとおもわれます。今週は護るくんといい、予想外のところで童歌詞が入ってきますね。

 かないみかはなにか凄く声が老けた気がする。ちょっと前にテレビで見た井上陽水が声量その他いろいろと微妙だったの同じぐらいショック。」