第十五話「ときめきの現実(うつつ)」

 かつて宇宙旅行会社の添乗員さんだった先生による、現世は夢、ネットライフこそまこと、という洒落にならない話。タイトルが意味深である。

 もちろん話としては、現実(教師生活)も捨てたものじゃない、ということになっておわるわけだけど、休日を丸々潰して、ビールを飲みつつときメモオンラインで「生徒」をやっている学校の先生、という光景の名状しがたい痛ましさのインパクトは覆しようもないのだった。スポーツでも読書でも映画でも音楽でも、趣味に没頭して一日過ごすぐらいそう変なことでもないのだが、ネットゲームだと何故このように、壮絶なのだろう?

 ときメモオンラインをやっている人は、先生を見て、ネットゲーマーを傍目で見る痛さに慄然としてそうだし、やってない人で、あの世界に夢を覚える人はまずいないだろう、
 もちろん傍目が悪いから、そのゲームが駄目っていうことはないのだが、だからといって、自分が傍目には痛いことをしているという認識が、厳然としてあるかどうかというのは、そのゲームへの没入度に大きく影響を与えるのは間違いないだろう。
 シリーズ的には、販促効果をねらってのエピソードなのかなとも思うけど、これは、むしろ客が減ったのではないかなあ? 余計なお世話?

 反則技的に強烈なテーマ面を別とすると、物語のオチは予定調和もいいところなのだけど、天宮さんを使ってフェイクを利かせたのはうまかった。むしろ天宮さんが真性のゲーマーでもよかった気もするが、学園のアイドルがゲーム廃人なのは、やっぱりやばいか。
 と同時に、ゲームのアイドル自らにゲームそのものを「私には合わない」と否定させるのは、さりげなく冒険である気もする。よくもまあ許可が下りたものである。

 こまかいところでは、誠実な正論を吐きながら、同時にしっかり桜井くんの行動を縛り上げる天宮さんの天然サド気質が素敵でした。