前編/後編

 デジキャラットシリーズの新作だが、設定も、キャラクタービジュアル面も(うさだヒカル以外)ほぼ引き継いでいないし、前編に至っては「でじこ」「ぷちこ」の単語すら出てこないという、後編の台詞を一部変えればそのままでじこの新作でない桜井弘明(脚本、コンテ、演出)のオリジナルアニメ、としてもまったく問題の無い一編にしあがっていた。というか、むしろ、後編で名前が出たときに違和感が凄かったぐらいである。

 視覚面でキャラが繋がっていないだけでなく声の面でもあまりつながりがないというか、沢城みゆきは、ぷち子というよりは、ちょっとかわいいクレアのようだし、真田アサミでじこというよりはエメレンツィアのようだった。いやむしろ、「にょ」を言うぶんエメレンツィアのほうがでじこらしいかもしれない。
 まあそれは別に欠点ではない。パラレルワールドとまではいかないのかもしれないが、これはたぶん「ひとつの可能性」に過ぎないのだろうから。

 内容は、丁寧な演出で淡々としたドラマをじっくり見せる。とくに、姉妹のほんわかあまあまな掛け合いは楽しい。
 ただ、台詞はもっと削れってもよかったかもしれない。特に前編は。

 ささきのぞみキャラと男の関係の確定(推測は前編の段階ですでに余裕で可能だけど)をぎりぎりまでひっぱってあまいオチに使うのはうまい。

 ぷちこの楽器がベースなのは、桜井監督がベーシスト(なんとあの美狂乱の第七期構成員でもある。セッションだけど)だから?

 いくらでも続きが作れそうではあるが、たぶん次は無いだろう。これはナデシコのプリンスオブダークネスとかパトレイバー2のような、同窓会フィルムなのだと思う。
 これは、その後の彼らの日常の一こまをきりとって見せたにすぎず、物語としてのポテンシャルはすでに無い。ドラマが中途半端であるように見えるのは、すなわち彼女たちの人生は続いていく、という意味での「未完」であって、デジキャラットというシリーズ自体はすでにこれ以前に終わっているのだ。すこし寂しいものがあるけれど、なにごとにも引き際がある。
 そもそもあの一年続いた「にょ」がでじこプロジェクトの最後の打ち上げ花火だったのだ。こういう形でオマケが見られただけでもよしとしたい。

 追記。そうそう、何度か写された駅が思いっきり国立駅だったのですが、見慣れた建物が出てきてうれしいというだけでなく、あの建物が今はもうない(保存運動もあったらしいが、駄目だった。まあ古いし狭いしねえ)だけに、感慨深いものがありました。どうせなら、より徹底的に国立を舞台にして、地域資料的にも価値のあるものにすればよかったのに。