第一話「プロジェクトにようこそ!」

痛いオタク、が売りの作家の出世作のアニメ化。原作小説は未読ながら、漫画版は四巻まで読んでいる(五巻は買ってはあるけど読んでない)ので、ストーリー的には、当分既知の世界と思う。

 さて妙におしゃれチックなOPと落差で勝負するような――嫌がらせともいう――前半戦がいい。
 設定的には、ニート(就職拒否)とひきこもりがごっちゃになっていたりするようないい加減さや、ひきこもりを自称しつつ、公園はともかくとして、食糧は買っていたはずだろうとか、無理なところが山積なのだが、電波な心象風景を直球かつ執拗に映像化して、延々見せつけることで、ニートとか引きこもりとかいう以前の、より普遍的に心がまずい方向に傾いてしまった人の内面を疑似体験させる仕掛けはとてもいい。
 個人的には、一話まるまるあれでも面白かったかもしれない。ほとんどの人が見るのをやめるだろうけど。

 後半、主人公が、ずいぶんと積極的に動き出し、ニートでもひきこもりでもないただの寂しい無職である実体をあからさまにしてしまうと、ドラマ的な面白さはぐっと下がる。岬が出てくると、思いっきりツイストをかけてあるにせよ、押しかけ妻系のラブコメのバリエーションだしねえ(アンチテーゼというには、ちょっと願望充足に過ぎると思う)。
 で、間が持たなくなると岬の妄想エロカットでつなぐと。ある意味深夜アニメらしいつくりともいえる。この辺は漫画版に実に忠実。放送コード的によく平気だったなとも思う。

 佐藤のトークは、演劇的にわざとらしいとはいえ、挙動不審キャラの類形には上手くはまっている感じ。

 漫画版は今どうなっているのか知らないが、まとめるのは難しいような、簡単なような、作り手次第という感じに思えるので、ようはそこまでどれだけ危ないイベントをエンターテインメントに昇華して見せられるかが勝負の分かれ目になるかと思われます。

 個人的には、本アニメの最大のポイントはエンディングの大槻ケンヂと橘高文彦の曲(筋少ファンなら、三柴理参加との情報に感慨深いものがあるはず――*1)であり、第二のポイントはパール兄弟製作のサウンドトラックだったりするわけだが。
 意外にも内容も楽しめたかなという印象でございます。


*1 橘高はもともと三柴のピアノと共演したくて筋少に加入したのだが、入れ替わりで三柴は脱退しており、グループ存続中は本格的な共演はついに叶わなかったのだ。

追記。
 さてその「踊る赤ちゃん人間」、出来はどうだったかというと、録画で何度かみて、そして、試聴できるサイト(http://www.jvcmusic.co.jp/-/Discography/A004578/VICL-36098.html )で断片とはいえ、放送分以外の箇所を聴いてみて思うのは、ファンとして狂喜乱舞していいのは、イントロのギターとピアノのツインリードパートだけかもしれないな、ということ。
 ファンなので面子だけで感動できるが、ファンなので作品への点は辛いのである。
 どこがまずいってやっぱり大槻のヴォーカルが、明らかに気合が足りない。新録の「踊る駄目人間2006」をオリジナルヴァージョンと聞き比べてみれば、その差は歴然である。まあでもオーケンも年だしねえ。

 同時収録の「日本ひきこもり協会のテーマ」は三柴のピアノが初期筋少的なノリで、「赤ちゃん人間」よりいいかもしれない。これをオープニングに使えばよかったのに。