第十六話

「秘技、相合剣! うりゃー」
 ぶす。

 これが今回最高の瞬間でしたね。
 なんていうかもう呆然。士郎がカリバーンを高く掲げたときのかっこ悪さ(剣が妙に短いとか姿勢が変とか)や、カリバーンが出てきたときなんとなくしゃもじに見えたことも、これに比べればたいしたことありません。

 さて、お腹にぶす、ですが。これはたしか原作の記述どおりだし、アニメ的に、つまり見た目の派手さ優先で改変したとしても、「七回殺す」が、唐竹割とか胴切りとかだと「一回しか斬ってないじゃん!」っていう苦情が沸くこと必至で、かといって、スーパービームで消滅とかだとバーサーカートークがさせられない――首だけ残して「さすがだ……だが私を殺してもまた新しいブラックゴーストが……」とかも出来たような気もこれを書いているうちに、実はしてきたのだけれども、しかしやっぱり剣がどうとか命がどうとかと長い台詞を生首が喋るのはギャグだなあ、という風にも思え、結局どこにいっても「原作」が邪魔をしてくるので、ここは(ここも?)何も考えずに原作どおりにするのが無難だとスタッフが判断するであろうことは、想像するにたやすいのであった。

 そんなこんなでバーサーカー編はあっさり終結。そこからは異常に長い午前中の話である。
 どういうことかというと――

 一、バーサーカーと戦った時点でもう日が出ている。曙光でもないし。最速でも五時?
 二、屋敷に帰って彼らは床についた。仮眠ではなく普通に寝ている。最短でも三〜四時間? これだけならまだ九時とかいう計算をしたくなるが、友よ、アインツベルンから士郎の家まではすごく遠いのだよ。夕刻に家を出て深夜まで辿り着かない距離なのだよ。一時間やそこらでは辿り着かないのだ。そういう距離を重傷を負った彼らはのこのこ歩いたのだよ。そうして家に辿り着いて、就寝し、しかしそれでもまだ「朝」なのだ。もしかしたら二十時間近く寝てたのも知れないが、それでは脳が溶けてしまうのであるよ。
 そしてまだまだ「午前中」は続くのだ。
 なんと凄いことだろう。
 なんと面白いことだろう。
 友よ。この物語は絶対――

 おっと脱線。

 三、起きて士郎が作ったのは「朝食」。例によってアホみたいに丁寧な描写。ってか朝からハンバーグ? どこの国の常識なんだろうかこれは。
 四、ハンバーグを食った後で、まさかそのまますぐ訓練ではない。吐くぞ。三十分は腹ごなししてるはず。後片付けもあるだろうし。
 五、昼食のサンドイッチ。これは朝と同じハンバーグを挟んだもの。すごく皮下脂肪が増量しそうな食生活ですね。というのはともかく、同じハンバーグである以上訓練シーンが翌日ということはありえないので、つまりあの時は「朝食」からそれなりに時間がたった「昼」であるということになる。(あれがブランチなら食べないか、もっと軽いものを作るだろう)。

 さて、一体この世界の午前中、は何時間あるんでしょうか。

 という時空のゆがみはさておくとして、次回からはオリジナル展開に突入の模様。あれ? 原作遵守はもう止めたのかい? 世の中すねてる場合じゃないかい? 最初からこうすればよかったと思うんですけど。もしかすると「アニメ・フェイト」は次回が真の一話やもしれません。

 そういえば、イリヤに殺された慎二のことを士郎はもう忘れてしまってるわけですが、昨日、おとといのことだよねえ? 「原作どおり」の呪文以外に、ごまかすすべがないわけですが……
 一方士郎が、セイバーの入浴に気づかなかったのは……気づかなかったということにしたというのが真実ですね。バトルでも、サスペンスでも、ギャグでも視聴者をつなぎとめられなくなったらやることは一つしかないですから。娯楽としては間違ってはないでしょう。自称「筋肉質」というセイバーの体が全然筋肉質に見えないことも同じ理由です。
 まああんなアーサー王はいねえとかは言いたくもなりますが……。性別はもう言ってもしょうがないとしても、どう考えてもお小姓さんなメンタリティですしねえ。